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鑑賞作品レビュー、視聴検討作品の備忘録

by 黄梅(hungmei)

2019年 02月 02日 ( 1 )

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   ここ数ヶ月立て続けに、ぶんか社グリム童話レーベルから、藤田あつ子さんの中国歴史漫画が文庫化されています。数冊既刊があり、それらに比べて今回は巻末の原典解説なしながら、とにかく文庫本になったのが嬉しい!

   6、7巻は5巻までよりもお話が私好みで、原典も7巻は史記、醒世恒言、中国民話など、普段のイソップ童話からのオリジナルストーリーより中国らしさがでている気がします。

   史記からは春秋戦国時代の有名な兄妹相姦の斉襄王と文姜、醒世恒言からは売り飛ばされると騙された妾が逃亡を図り、かえって主人殺害の濡れ衣を着せられてしまう話。また、実在人物伝で悪女と名高い明成化帝の17歳上の皇貴妃万氏の物語がひねってあり、万氏に同情的な展開でした。「成化帝」が「成北帝(せいほくてい)」と、ルビまで違うのは、誤植だよね、、でも個人的に好き!

   日本では馴染みがないですが、年末に天界にあがり天帝にその家の様子を報告するという「竈の神様」、竈王爺の民話も。人間から神になったのが徳によるのでなく、情けなさ過ぎて、天帝は同姓のよしみで竈の神にしてあげたという、中国らしさ爆発(だと思う)。同姓、強い。それによると竈王爺は人間のときは張郎といい、したがって天帝は姓は張氏なのか。何だか神様に姓があるってぴんとこない、、

   6巻の方は、昔の張藝謀監督作品なんかでお馴染みの妻妾成群や望門寡婦監禁、密通、自殺などの暗い話が印象的でした。そこで民国期上海の租界、文明結婚や西欧化と絡めてオリジナル色強めになっていたのが出色。辮髪を切ろうが外見だけ西欧かぶれになろうが、夫の中身は封建的なままという。

   望門寡婦は婚約したまま相手に死なれた女性で、清ー民国期などは歴史上最も婦女貞操に厳しいため、再婚どころか婚約者が死んだら一生未婚で蟄居、下手したら婚家に送り込まれそこで蟄居というか幽閉。密通しないよう顔を傷つけられたり、逃げようとして殺されたり、そうでなくても自殺したりのいいとこなし。

   イスラム圏の名誉殺人を連想させるような(詳しくは違いますけど)、さすが儒学の大家が「餓死事小失節事大」、餓死することより貞節を失うほうが大変なことだ、と語っただけあり、読むのも怖い。お化けより人間が恐ろしい。そしてタイトルほど悪女は見当たらず、ケチな強請や、逆にダメ夫をはめて幽閉してしまう強い妻などがでてきます。

   6巻の表紙、左は後漢の外戚・梁翼の妻、孫寿。夫のブレーンでもあり、落馬したかのような厭世的な奇抜ヘア「堕馬髻(だばけい)」、極端に下がりこれまた独特な眉「愁眉(しゅうび)」、泣いたあとのように下まぶたを赤っぽくする「啼粧(ていしょう)」など、当時のへんてこモードのトレンドセッター、かつ自分の親戚で美しい娘(鄧猛女)を梁氏の女と偽り後宮にいれるなどやりたい邦題。

   梁翼は梁太后のきょうだいのため一時的に大将軍となりますが、歴史を見ているとあまり器ではなかったのかな。そもそも後漢は外戚の跋扈で滅んだと言われますし(梁冀も質帝を毒殺した)、末期の三国時代に比べなんだか地味な気もして。それだけに、こうして漫画で読めてラッキーだし、藤田さんの衣装の考証は毎度ながらさすがの素晴らしさ。お衣装だけでもとても楽しめました。

by hungmei | 2019-02-02 06:43 | 4ブログ関連書籍 | Comments(2)