噂によると
1995年『龍の涙』から始まったという韓国時代劇ブーム。従来主流だったのは後宮を中心にした「大奥」系ドラマ。そこでは王族や后妃による政治闘争が中心の内容。しかしイ・ビョンウン監督のMBC『
チャングムの誓い』(2003)あたりから、より幅広い属性の主人公をもって(女官、医女、商人など)様々な題材を扱うようになったらしいです。同監督『
チェオクの剣』[原題:茶母](2003)では初の特撮ワイヤーアクション時代劇でヒットをとばし、2008年には『オポチュル』という時代劇シットコムも登場。フュージョン時代劇の時代になりました。
また高句麗の初代、東明聖王を描いた『
朱蒙』(2006)など、李氏朝鮮だけでなく渤海、高句麗、高麗、百済など様々な時代が扱われるようになったのも特徴。そんな中、まだベッタベタな「大奥」ドラマが好きな私が、気になって調べたのが下記の女性たち。
旧型「大奥」ドラマの常連で、李氏朝鮮時代の后妃、宗室です。私の知る限りですが、これから見たい時代劇と共にご紹介。もとは中国・日本のウィキペディア、「韓国の歴史」(河出書房新社)、ドラマガイドなどの集成なので割引て下さい。ピンク色の字はクリックで中文もしくは日文での紹介記事にとびます。
・・・・・朝鮮三大悪女・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
張緑水(?-1506)...チャン・ノクス/
日本語での紹介ページ 10代
燕山君の妃。妓生出身。女好きで有名な
斉安大君(8代睿宗と安順王后韓氏の第二子)の家の歌妓だったが、宴会で10代燕山君の目に留まり後宮入り。はじめ淑媛(従四品)に封じられ、のち淑容(正三品)。中国の故事にならい、口紅をつけたハンカチを渡し燕山君を射止めたという伝説あり。燕山君廃位後、惨殺される。時代劇としては1995年KBS『張緑水』や、1998年KBS『王と妃』、呉秀敏が演じた2007年SBS『
王と私』に登場。『チャングム』や映画『
王の男』(2005)は時代がかぶっていますが、『王の男』ではその悪女ぶりを発揮し芸人コンギル♂と寵争いをした。彼女と鄭蘭貞、張禧嬪で
朝鮮三大妖女。たまに金尚書や他の人も入るみたい。
鄭蘭貞(?-1567)...チョン・ナンジョン/
日本語での紹介ページ 11代
中宗の時代、姻戚の正室で貞敬夫人。草溪鄭氏の出身で、都総官鄭允謙の庶子。母は官婢のため、身分は賤民らしい。
文定王后(11代中宗の第三位王后、12代
仁宗の養母で、13代
明宗の生母尹氏)の兄・
尹元衡の妾となるが、1551年、正室を毒殺。当時の身分制度から賤民出身の彼女は王族の正室にはなれなかったが、文定王后の後ろ盾を得て尹元衡の正室となり貞敬夫人(従一品)に。文定王后が摂政をつとめた8年間は権謀を尽くして中宗の子鳳城君(
熙嬪洪氏所出)と争う。文定王后の死後は失脚し処刑(撲殺)。この人といえば時代劇の巨人・キム・ジェヒン監督の150話長編『
女人天下』(2001年)。大陸、台湾でも人気をよんだようです。
金介屎/金尚書 名前はケットン、ケシ。14代
宣祖の寵妃、15代
光海君の愛人。貧しい出身で宮女となり、14代宣祖の聖恩を受け金尚書(正五品)に。宣祖の庶子・光海君(
恭嬪金氏所出)と義理の親子でありながら通じ、夫や嫡子の
永昌大君(
仁穆王后所出)を殺害。しかし王孫・綾陽君のクーデター(仁祖反正)で光海君は廃位、彼女は処刑。金尚書は綾陽君の祖母・
仁嬪金氏と宣祖在位時代からのライバル。金氏は後継者争いに負け息子の信城君は病死、宣祖死後には慣例によって宮殿を去りすぐ亡くなりますが、孫の綾陽君が王位奪回し16代
仁祖となる因縁の対決。金尚書はパク・ソニョン主演SBS「王の女」(2003)、イ・ヨンエ主演KBS『宮廷女官 キム尚書』(1998)で主人公。
張禧嬪(1659-1701)...チャン・ヒビン 19代
粛宗の妃で禧嬪張氏。20代
景宗の実母。チャン・オクチョンという名。玉山張氏の出身で中人階級。幼少時、叔父の張炫が謀反に連座し処刑されている。当時、粛宗は仁敬王后を亡くした後で、明聖王后の後押しで
仁顕王后を娶ったが、
大妃・明聖王后vs
大王大妃・荘烈王后の対立(※)が起きる。張氏は荘烈王后の後押しで宮中入、王の寵愛を集める。淑媛に封じられた後、第一子の李昀を産み世子に。のち禧嬪に昇格、仁顕王后に「七去」の汚名を着せ廃后に追い込む。しかし仁顕王后復位後に張禧嬪の仁顕王后暗殺計画が発覚、粛宗から死を賜り、粛宗は「以後、嬪を妃にせず、妾を妻にしない」と命令した。景宗により大嬪宫玉山府大嬪張氏に追号。
『張禧嬪』(1961)、金芝美主演/映画『妖花張禧嬪』(1968)、南貞妊主演/MBC『張禧嬪』(1971)、尹汝貞主演/MBC『女人列伝』第一話、
李美淑演/『朝鮮王朝五百年』「仁显王后」(1988)
銭忍和演/SBS『張禧嬪』(1995)
鄭善敬主演/KBS『張禧嬪』(2003)、金恵秀主演
・・・・・・後宮の覇者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
仁粹大妃/明恵王后(1437-1504) 9代
成宗の実母で10代燕山君の祖母。父は韩确、母は南陽府夫人洪氏。おばは明の後宮にあがった家柄。はじめ7代世祖の世子・
桃源君(懿敬世子)に嫁ぎ世子嬪・貞嬪になるが、即位を待たず夫は死亡。その後、義弟の海陽大君が8代
睿宗に。しかし睿宗死後は彼女が実験を握り、実子の者山君を9代成宗に擁立し桃源君に
「徳宗」と追号。彼女も仁粹王大妃となる。成宗の妃・
尹氏とは不仲。のち尹氏は廃妃され成宗から死を賜る。10代
燕山君は尹氏の実子で、この一件は燕山君・仁粹大妃間に大きな溝を作る。燕山君は尹氏事件に関係したものを殺し
(甲子士禍)、尹氏を斉献王后と追号。仁粹大妃は失意のまま亡くなる(一説に謀殺)。ドラマ登場は下記。
MBC『朝鮮王朝五百年-雪中梅』(1984年)、高斗心主演/KBS韓明浍』(1994
金英蘭主演/KBS『張緑水』(1995)、潘孝貞演/KBS『王と妃』(왕과비)(1998)蔡时那主演/
SBS『
王と私』(2007)、
銭忍和演
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※正室の呼び名
・中殿=現王の正室。
・大妃=主に現王の母で先王の正室。
・大王大妃=主に現王の祖母で先々代の王の正室。
・王后=上記に該当する王の正室、生母たちの正式な名前。
嫡母(現王が庶子だと血縁はない先王の正室)の場合もあり。
大妃の権威は高く垂簾聴政を行う時もたびたびあった。
貞熹王后、文定王后、貞純王后、純元王后が有名。
朝鮮時代の後宮制度:正一品(嬪)、従一(貴人)、正二(昭儀)、従二(淑儀)、
正三(昭容)、従三(淑容)、正四(昭媛)、正五(尚書)・・・で、九まである。
尚書はお手つき以外の女官の最高位で、20年以上務めるとなれたりする。
歴代王:1太祖(李成桂)、2定宗、3太宗、4世宗、5文宗、6端宗、7世祖、8睿宗、9成宗、
10燕山君(廃位)、11中宗、12仁宗、13明宗、14宣祖、15光海君、16仁祖、
17孝宗、18顕宗、19粛宗、20景宗、21英祖、22正祖、23純祖、24憲宗、
25哲宗、26高宗、27純宗
※徳宗、翼宗、荘祖は実際に王位にはつかず亡くなった。また徳興大院君、興
宣大院君は自らは王位につかなかったが息子が王になったための尊称。
身分制度:良民(両班=高級官僚、中人=中流官僚位、常人=庶民)、賤民(奴婢、白丁)
朝鮮王朝后妃(中文)、
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