粤劇電影でモノクロ版です。ということは50-60年代前半くらいか?
女小生として有名な任輝剣と、彼女と名コンビを組む女優の白雪仙が主演。この二人が演じる元帥と公主の恋愛喜劇です。粤劇は広東の劇。黄梅調など香港映画で同時期には北京語電影もたくさんありますが、これはバリバリ粤語(広東語)。フィルムが古くて真っ白に近くなること多々あり見ずらいが、字幕はクリアで便利です。
・・・・あらすじ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
珮霞公主は花園で散歩していたが、官僚の鑑梅会に首を突っ込み相国(文官)二人と喧嘩に。そこへ元帥(軍人)の許士雄が仲裁し、翌日、それが皇帝の耳に入る。花園での騒動はそこで決着がつき、皇帝と公主はそれぞれ許を気に入り附馬に招く。結婚式後、夫妻は附馬府(公主の夫の邸宅)に向かうが、公主の高慢さから夫婦喧嘩勃発。公主は激怒して王宮に帰る。許は謝罪するが、ついに公主は皇帝に婚姻解消を申し出、許は出家させられる。公主はいざ離れてから情に気づき自分の短気を後悔。相国や公公のとりなしにより、公主は寺にいる附馬を訪れ謝罪。すったもんだの論争のうえ夫妻は復縁し、めでたく終。
・・・キャスト・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
珮霞公主....白雪仙
典型的わがまま公主。歌う時の声はかなり高く耳に残る。皇帝からは可愛がられ、皇后も実母とあって、地盤は磐石みたい。父からお許しがあってからは堂々と許に話しかけ、得意のツンデレで彼の気持ちを試す。許を出家させた後、失ったものに気づき山寺まで復縁を頼みに赴く。世間知らずながら附馬と和解しようと必死(「阿弥陀仏」がわからなくて公公に意味を聞いていた)。この女優さんはモノクロでこれだけはっきりしたバタ臭い顔なんだから、カラーだとどれだけ濃い顔なんだろうと想像してしまいます。
許士雄.......任剣輝
前半はあんまり出番なし。善良で頭も良く、附馬(公主の夫)と白羽の矢がたつ。騙されてんだが騙されたふりをしてあげているんだか判然としない。しかしいざ結婚となりやはり公主に怒った。しかも出家させられ、とんだとばっちり。公主が寺を訪れた際は世捨て人の体で取り合わないが、最後は復縁する。この人は私が見た女小生で一番パス度(本当に男性に見える度)が高い!全体的に粤劇自体が音程低めのメロディにも感じますが、彼女は声がすごく低いです。
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広東語だわ歌はなじみはないわで理解に悪戦苦闘。でもモノクロ戯曲片を満喫できたのは良かった。広東語は出来ませんが、北京語より硬い響き(?)
粤劇になると、歌の発音がガラッパチ風にも聞こえる。お上品という感じではなく、親しみ易く感じるのは気のせいか。あと「アイヤ~」ってよく言ってる。特に白の歌は音程が非常に高く鼻にかかった感じで粤劇らしさ(?)を堪能。男性陣がとにかくみんな痩せてガリガリ。戯曲片の中でもかなり能天気な部類に属する筋と雰囲気。でもしかし輿も使えない山奥にある寺を訪ね、公主が山道を文句タラタラで歩く姿は笑えます。そのときのロケ風景もかわいい。公主が実家に戻った際、許が謝罪する場面も窓越しの会話が戯曲らしい演出で素敵でした。
皇 帝.......李海泉
髭をつけ束帯も立派だがわりとコミカル。皇帝とは思えぬ親しみやすい雰囲気。許の弁舌の爽やかさと機転にひかれ婿にする。娘に対峙する姿はまさに下町のおっさん。公主の短気を諌めるかと思いきや、そのわがままを聞き入れ許を寺にいれ僧侶にしてしまう(僧侶し剃髪させるのは附馬をかなり辱めることになるそうだ)。いつもは皇帝を前にして論戦が繰り広げられ、そこで円満解決となるのが多いので面くらいました。この父にしてあの娘があるのか?
公公
白髪ぼさぼさの姿は横溝正史の小説に出てくるおばあさんみたいでホラー。わがまま公主に振り回される善良なおじいさん。おてんば公主のお守によぼよぼ宦官てよく見ますが、もっと元気な侍女とかもつけた方が安全だと思う。しかも許の出家と、そこを公主が訪ねるときの二回、山奥の青山寺まで先導を勤めさせられ青色吐息。なぜこのおじいさんにその役目・・。青山寺での夫妻の和解の際には、世間知らずの公主をフォローする。
相国の二人
二人とも痩せた髭のあるおじさんで濃色と淡色と服で見分けられる。腰を曲げた歩き方が独特。花園で公主と許をからかい(そもそもこの二人と公主の諍いが事の発端だが)、その姿はさながら漫才コンビのよう。許が出家させられた後は、公主の気持ちを察して「国のためにもなりますよ」と訳わからん理由で夫妻和解をお膳立て。もちろん男優さんが演じています。
皇后
皇帝と年のつりあったおばさん。頬骨は高く出っ歯気味であんまり高貴に見えない。頭飾りと髪型は独特で、他の電影や戯曲では見たことがありません。たぶん公主の実母。青山寺で夫妻和解の話し合いがなされたときには、僻地にも関わらず皇帝とともに同行している。