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越劇・黄梅戯・紅楼夢 since 2006



数字越劇舞台芸術電影『紅楼夢』

数字越劇舞台芸術電影『紅楼夢』_d0095406_13174096.jpg
 2007年、上海越劇院演出。ここの紅楼夢といえば銭恵麗・単仰萍の紅楼劇団コンビか趙志剛・方亜芬の尹派男女合演コンビの印象が強いですが、この電影では同じく王派のスターである王志萍が林黛玉を、徐派小生の鄭国鳳が賈宝玉を演じています。内容は経典版=1960年代電影の徐進脚本による徐玉蘭・王文娟版で、元妃省親で始まる上海大劇院用のハデな新版ではないです。作中、「上集」「下集」とテロップが出るので、電影といってもテレビ放映用なのかもしれません。

【あらすじ】
 黛玉入府→仲の良い2人、同枕や頬に紅のくだり→宝釵入府→大観園落成→読西廂→琪官を逃がす→書房で勉強中に晴wenの眉を描き、襲人に咎められる→笞宝玉→題ハンカチ→閉門羹→黛玉葬花→紫鵑が「黛玉が蘇州に帰る」と嘘をつき宝玉を試し、大騒ぎに→王煕鳳献策、襲人が二玉の仲をばらす→凧揚げのシーン、ばかねえやが秘密をもらす→黛玉焚稿→雪雁が金玉良縁を紫鵑に知らせる→宝玉哭灵→雪の中、大虚幻境(?)に帰る宝玉

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賈宝玉...鄭国鳳
 徐派トップは銭恵麗かもしれませんが、鄭も負けず劣らずのキャリアと実力(だと思う)。王志萍とはよく組み『蝴蝶夢』などでその名コンビぶりが伺えます。ベテラン40代ですがこの人は若く見えるなあといつも思う。今回の宝玉は、普段にもましてちょこまか動きが多く、こりゃ勉強にうちこみゃしないよなという落ち着きの無さ。

林黛玉...王志萍
 日本居住でキャリアを中断、06年から復活した王派小旦。「小王文娟」の称号があるそうですが、はっきり言って今回の黛玉は外見が受け付けません。もう少し年上の役が似合うと思う・・・(すいません)。単の黛玉も「年上っぽすぎて黛玉に見えるか」と思っていたんだけど、王志萍の黛玉はなんだか華がなさすぎる・・歌は抜群です。

王煕鳳...謝群英
 経典版だけど、衣装は新版みたいな変なマントで登場。赤と黒の毒々しい配色もイヤ。でも歌は良くて、林黛玉との初対面の歌は大好きでこのドラマでも一人気をはいていた。金派小旦でこの人もベテラン40代。関係ありませんが目が大きくて小顔でショートが似合い、素顔がすごく好きな女優さんです。

紫 鵑...黄依群
 紫鵑にしてはちょっと老けている気が・・・。王志萍と並ぶと少女同士に見えない。よく見る女優さんですが、手元にプロフィールがなかった。雪雁から金玉良縁を知らされ憤慨するシーンはもとにはあったかな?その後、周瑞家的に式に呼ばれるが拒否。面白いなと思いました。

薛宝釵...金 静
 静安越劇団に入り威雅仙に師事した威派小旦。ベテラン40代くらい。噂では日本にお住まいとか・・。確かに90年代には日本に出国したと公式プロフィールにはあります。お仕事のたび帰国するのでしょうか?

賈 政...呉 群
 老生にしては顎が細く、女性的な感じもしましたが、そこが徐天紅とかみたいでかっこいい髭メン。張(桂鳳)派老生で79年生まれの29歳です。主役2人が40代の女優さんだけど、20代の老生がお父さんなのが戯曲らしい。

琪 官....張宇鉾
 ジャケットでは字が「鉾」となっていますが、恐らく「峰」さんでは。「青春版」でも琪官を演じており、陸派小生のホープの83年生まれ。琪官は行当だけに小生の中でもひときわたおやかで女性的な美しさの方が多いです。。曹銀[女弟]=電影『舞台姐妹』で妹役の越劇女優、の役だし。

襲 人...唐暁羚
 紫衣装で一見、紫鵑とだぶりますが、そこそこはまっています。呂(瑞英)派・金(采鳳)派、花旦(快活な若い女性)・青衣(落ち着いた中年女性)を兼任する芸域の広い女優。この人も良かった。

晴 雯..盛舒楊
 84年生まれの傳派小旦。「青春版」では紫鵑を演じていました。快活で明るい役が似合うかわいらしい女優さんですが、晴wenをやるには色気不足に感じます。あやうい感じがないの。

王夫人...応国英
 越劇王子の「紅楼夢」でも王夫人役だった。チワワ系でちょっと迫力不足かな・・。この人もプロフなし。髪型が普段の王夫人と違い高く結い上げ髪飾りも派手で印象的でした。83年来日公演で襲人役だったらしい(コメント欄での上海やきそばさんからのご指摘です)。

はいめい...呉佳[女尼]
 青春版でもこの人が同じ役。あと折子戯では薛蟠も。宝玉に西廂記を渡すシーンは、褒美に腰の下げ物をねだるが、「これは林妹妹からもらったのだからダメ」というところが越劇30集ドラマ(2001)を思い出します。

賈 母...愈会珍
 顔がやや若いけど歌はうまいです。けっこう小柄でそれがまたおばあちゃんぽい。浙江小百花越劇団舞台版『新五女拝寿』で陳夫人を演じています。

薛姨媽...董美華
 経典版のトリプルキャストでも、50周年公演の折子戯「二姐呑金」でも王煕鳳も演じていた。しかし一瞬しか出番がなく印象0。

長府官...蔡 燕
 この役といえば張桂鳳派の金紅を思い出すんですが、損な悪役を担当する人が増えるのはいいことですね(?)。折子戯「雪地追子」では賈政役。

雪 雁...忻雅琴
 黛玉が蘇州からつれてきた侍女。演じるのは青春版紅楼夢で林黛玉だった女優さん。目立たないけど確実にフレームイン!

周端家的...楊才英
 式に紫鵑を呼びにきたが、従わないので雪雁を強制連行していった。越劇王子の新編越劇『家』は第五夫人を演じていた女優さん。

鶯児...樊婷婷
 薛宝釵の侍女。樊は金派小旦。歌の出番がないので何とも・・。

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 見た感じ、舞台版と映画版のあいのこ位のチープなセットで、TVドラマ版という感じ。9月に上演された「青春版紅楼夢」とも演員がかぶっています。歌は後から吹き替えでしょうし、青春版の演員が多いせいもあるのか、歌にすごく力が入っている印象。もちろんいつも皆さんお上手ですけど、それに加えて気迫というか気合を感じます。それに舞台版より展開が早くて驚きました。普段の越劇のテンポと違いすぎて最初めがまわりそうに・・・。そのぶん後半の悲劇がどっぷりなんですけど。
by hungmei | 2008-10-05 22:24 | 1越劇、黄梅戯、地方劇 | Comments(11)
Commented by hungmei at 2008-10-05 23:39
王志萍も王派も好きですが、『紅楼夢』があまり好きではないと気づきました。歌は好きなんだけど、芝居として悲惨すぎるから、わざわざ戯曲でまで悲劇を見たくないんですよね。
Commented by 上海やきそば at 2008-10-06 12:09 x
 こんにちは、はじめまして。いつも楽しく、そして学習させて頂きながら
拝見しております。

 私は、1983年の訪日公演 <紅楼夢> をテレビで見まして、
それ以来の紅楼夢並びに越劇のファンです。
 中国にこれほどの美しい舞台と、華やかな貴族文化があったことに、
当時の私は衝撃をうけました。

 舞台中継では、襲人さんを応国英さんが演じられていて、
当時20代前半の彼女は、とても美しく可憐で、襲人役に
ピッタリでした。今は、王夫人を演じているという情報を
読ませて頂き、時の流れを感じております。
琪官役は銭麗亜さんで、とても美しい歌声でした。

 ついつい懐かしくて、長々と書いてしまいました。
これからも、hungmei さんの素敵なサイトを楽しませて頂きたいと
思います。では、失礼いたします。
Commented by hungmei at 2008-10-06 15:12
上海やきそばさん

こちらこそはじめまして!ページ主の黄梅(hungmei)といいます。aが抜けていますが・・それ程の拙い中国語力でも、こうしてブログをちんたら書いてきて、上海やきそばさんのようなベテランのファンの方からコメントをいただけるなんてとても感激です!しょぼいなりに書き溜めてきた甲斐がありました。

応国英さんは襲人を、琪官役は銭麗亜さんだったのですね。銭さんは今「領唱皇后」ですから、私はあまりお姿を拝見したことがなく、とてもうらやましいです。応国英さんは新編越劇『家』では周氏など、最近は中年女性役が多いみたいです。顎が小さくこづくりでかわいらしいおばちゃま、といった感じです。

しょっちゅう間違い(指摘されて大慌てで直すこともしばしばです)をしながら、何とか続けてみて、本当に良かったです。こちらこそいろいろとコメントをいただけると、勉強になります(^^)ファン歴3年の私ですが、どうぞ今後ともよろしくお願いします。コメントもお待ちしています!
Commented by 上海やきそば at 2008-10-06 22:32 x
   黄梅さん、今晩は。

 早速コメントをいただきまして、ありがとうございました。
こちらこそ、よろしくお願いいたします。
ベテランファンなんて言って頂いて、恐縮です。
私はただのミーハーファンで、焼きソバ好きです。
黄梅さんこそ、沢山勉強をされていて、
素敵なサイトも運営されていて、尊敬しております!

 当時は、ネットがなかったもので、<上海戯劇>を
定期購読をして、情報を得ていました。
徐玉蘭さんが、まだ10代の王志萍さんの舞台姿を見て、王文娟さんに
「あなたにそっくりな娘がいるわよ 」と 教えたという記事を
見つけて、確かにそっくりだな~と思ったこともあります。

 >応国英さんの襲人
 まさに桂に似、蘭のごとし という風情で、仕草もたおやかで
情緒もあり、NHKのカメラマンもお気に召したようで、
第4場で、お茶を淹れるために去って行く美しい後姿を
意味もなくカメラで追っていました(笑)
彼女の襲人は、小賢しいいやらしさが全然無く、その上美しいので、
私には永遠の襲人さんです。
 
 またまた長々と書きまして、失礼いたしました。
  
Commented by hungmei at 2008-10-06 23:17
上海やきそばさん:

「上海越劇」を定期購読ですか。なるほどすばらしいです!私も買うか、演劇博物館に探しに行こうかな・・・。王志萍さんにはそんなエピソードがあったのですね。

襲人は越劇ではやや悪役ですが、原作を読むと「将来、富喜を楽しみたい」とは言っているけど、そこまで悪事は働かないだろう、宝玉の結婚にまでちくるようなまねはしないのでは・・・と思っていたので、楚々とした応国英さんの襲人は見てみたかったです。NHK放映のビデオを所蔵している方がいるので、今度借りてみてみようかなと思いました(なかなかお会いできないので、頼むチャンスがなくて今まで頼んだことがないのです)。

越劇の勉強を始め、同世代の女優さんも第一線で活躍するようになり、第一世代(越劇創成期)やや80年以降の第三、四世代(たぶん)の女優さんは情報が入手しやすいのですが、若き日の応国英さんや来日公演で主演した沈干蘭さんのような、その真ん中の世代の女優さんについては私の語学力やチャンネルだとまだよく知らないのです。なので上海やきそばさんの書き込みがとても参考になります!
Commented by 上海やきそば at 2008-10-07 22:30 x
   黄梅さん、今晩は。
 わたしの拙い書き込みを、参考になると言っていただいて
うれしいです、ありがとうございます。

 NHKの舞台中継は、日本公演用に淡白にアレンジされた
台本のようでして、おまけにカットされている部分もありますので
各完全版をご覧になっている黄梅さんには物足りないかもしれません。
私は、もうこれで刷り込まれていますが(もうメロメロです)

 >沈于蘭さん
 当時30代後半ということでしたが、我儘公子を元気に
ハツラツと演じられていて、素敵でした。後半の悲劇部分も
熱演で、通霊宝玉を棄て超然と賈家を出て行く姿は、見事です。
 文革の頃26歳位だったようで、「一番綺麗な時期を
潰されてしまった」 と語ってらっしゃる記事を読んだ事があります。
始めは二枚目役でしたが、文革中に、女が男を演じるのは
不自然と言われたので、女性役も勉強されたそうです。

 また少しでもお役に立てれば幸いです。
では失礼いたします。
Commented by hungmei at 2008-10-09 16:45
こんにちは!

83年の公演自体は不明ですが、テレビ放送はやはりアレンジされたものだったのですね。どんなところがカットされていたのですか?「黛玉葬花」の部分だけは見たことがありますが、ずいぶん薄暗くてびっくりした記憶があります(照明の関係??)

文革の頃は亡くなられた女優さんもいらっしゃいますし、やはりみなさんそういった体験をされたのですね。そう考えると、文革経験者の俳優さん達がすごくカッコよく見えてきます!越劇の本だと、沈干蘭さんは「男役も女役も出来る」と特筆されていて、すごいなーと思ったものですが、もしかしたらそんな背景もあるのですね。なるほど。また勉強になりました。

ちなみに沈さんの女役は「打金枝」の公主役で、写真で見る限り結構はまっています。ちなみに一緒に掲載されている賈宝玉姿のお写真は日本公演時のものです。

Commented by 上海やきそば at 2008-10-11 16:29 x
  こんにちは

 訪日公演用の台本には、「試玉」が無いようです。
カット部分は、どの場面にも、まんべんなくあります。
たとえば、「宝黛初会」の場面も、御隠居様の「それなら
仲良くなれるだろうね」 までで、黛玉に「玉をお持ちですか?」などを
訊く場面以降カットです。
 放映時間が一時間半しか無かったので、仕方がない事とはいえ、
残念な気がします。もし黄梅さんがご覧になったら、
ビックリなさると思いますよ。

 では、また書き込みさせて頂きます。
失礼致します。
Commented by 黄梅 at 2008-10-13 09:05 x
普通の舞台版は3時間くらいですものね。私も、家で見るから耐えられるけど、会場で3時間は耐えられるかな・・(休憩ながら見ているので笑)。確かに、玉を持っているか聞くところも、試玉も、なくても何とか筋は終えますね。むしろ原作を知らない人にはすっきりしてわかりやすくなるのかも?

最近「卓越網」や「当当網」を使える様になり、今までほしくても入手できなかったソフトがたくさん買えるようになりました。さらに色々と見てみたいと思います!それから、「上海越劇」、書虫で定期購読できないかチェックしたら、「上海戯劇」だけなんですよね。仕方ないから、「黄梅戯芸術」だけ頼みましたが、上海やきそばさんは、どうやって取り寄せていらっしゃいましたか?宜しければぜひ教えてくださいませんか。
Commented by 上海やきそば at 2008-10-14 17:28 x
  こんにちは

 私が定期購読をしていたのも、「上海戯劇」です。
越劇専用の定期刊行雑誌が発行されればいいですね!

 黄梅さんは、日本で開催された「紅楼夢展」の図録をお持ち
と記憶しておりますが、どうやって入手されたのでしょうか?
古書店でお買い求めになったのでしょうか?
差し支えなければ、お教え頂きたく存じます。

 では、また書き込みさせて頂きます。
失礼致します。
Commented by hungmei at 2008-10-14 23:21
ああ、今まで上海「越劇」と見間違えていました・・・(この調子でいつも何か勘違いしています、すみません)。本屋さんにも聞いてしまって恥ずかしいです。

図録ですが、残念ながら私は持っていないんです。何かの本(伊藤漱平先生の論文か何かだったかな・・)で引用されていたような気もしますが、ちょっと思い出せません。賈府の模型などが展示されていたと聞きますが、すごく面白そうですね。

古書店もありますし、そういった資料ですと今はネットオークションも強いのではないかと思います。意外に(?)学術的価値が高いものがぽろっと売られていたりもしますし。

「上海戯劇」購読してみようと思います!
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