京劇『対花槍』でも有名な、
老旦(女性の老け役)が武技で大活躍という珍しい内容。もともとはこの豫劇が本家のようで、後に京劇に移植されたらしい。『穆桂英掛師』なんかと同じ流れですね。このVCDは内容もさることながら、このジャケット写真での武旦の美しさに惹かれて購入。豫劇は常香玉主演の『花木蘭』など、女将軍ものが得意なんでしょうか。それはステキ!声が甲高いのが苦手ですが、レトロな戯曲映画ふう背景もあいまって楽しく見られます(1985年作品)。
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------あらすじ-----------------------------------------------
羅芸は科挙を受けに行く途中病気になり、南陽の姜家に滞在。そこで姜桂枝と知り合い結婚、桂枝から家宝の花槍を預けられる。羅芸は全快後、上京し、将軍・秦旭に認められその娘と結婚。羅成という息子が生まれる。四十年がたち、隋の末、羅芸は再び戦争に参加していた。姜桂枝は夫の消息を聞き、子の羅松、孫の羅煥を上京させ談判に行かせる。羅芸は体裁を気にして彼女を妻と認めようとせず、その上、正妻の息子の羅成は戦いを挑む。しかしかえって甥の羅煥に生け捕られ、姜桂枝の意思を父に伝えさせられる。しかし羅芸は納得せず、姜家へ殴りこむが、激怒した姜桂枝と戦い負ける。最後には羅芸が桂枝に謝罪し一家団円。夫婦達も、兄弟達も照れ笑いで寄り添う。
-----キャスト----------------------------------------------
馬金鳳(飾:姜桂枝)
この劇の女主人公で姜家のゴッドマザー。四十年前、道中病に倒れた羅芸を助け、結婚。子の羅松を産む。羅芸が上京後は音信不通となり、四十年後その消息を聞きつけ息子と孫を派遣。羅芸に姜家に戻り婿となるよう頼むが、羅芸が拒むとそれを受け戦う女丈夫。老婆姿と若いときの姿は馬の二役のようです。でも40年待ったのがまずスゴイ。
羅 成(飾:李広海)
羅芸と秦旭将軍の娘との間の息子で、羅松の異母弟。父に庶子(羅松)がいると聞き激怒し姜家の攻め込むが、かえって甥(しかもかなり年下)の羅煥に打ち負かされ落ち込む。ふてくされる姿はちょっとかわいい。証拠の靴を預けられ父に姜桂枝の意思を伝える羽目になり、父が姜桂枝に負けたときは、父の命乞いをする。最後は姜桂枝を敬愛するようになる素直さん。
羅 芸(飾:任四亮)
道中滞在した南陽で姜桂枝と結婚するが、全快し上京した後は音信普通に。しかも高官となり、秦旭将軍の娘と結婚。羅成をもうける。正式に結婚式をあげたくせに糟糠の妻を捨てる最悪の男。最後は大反省し、同僚に冷やかされながら、姜桂枝の鞋で顔を叩いて謝っていた。
程咬金(飾:馬東法)
姜桂枝と羅芸の仲介をし、ケンカを治める(というか、この場合、羅芸が100%悪いけど)ひょうきんなおじいさん。このほか、羅芸の同僚一同が羅芸VS姜桂枝戦をいちいち馬家のある地域まで見にきている。何やってんだか。最後の和解のところなんか、みんなくすくす笑いで冷やかしている。
羅 松(飾:楊建洛)
羅芸と姜桂枝の息子で、羅成の異母兄。数十年音沙汰のない父を尋ね、息子とともに上京する。この人もかっこよい。この映画、男性人が美or丑のどちらかしかいない。普通はないのか?姜桂枝が羅芸を殺しそうになると止めに入るなど、異母弟(羅成)に比べ思慮深い性格。
羅松妻(飾:陳 貞)
羅松の妻。おとなしくて控えめ。息子(羅煥)に負けた羅松を迎え入れ、兄嫁として挨拶するが、拒否される。でも耐えるできた女性。姜桂枝の横に常に控えている。最後の曽祖父母対決シーンでは彼女も武装していたので、戦えはするのでしょう。
羅 煥(飾:谷 霞)
羅松の子、羅芸と姜桂枝の孫。童形。喧嘩っ早い。おじの羅成と橋で偶然出会い一戦交えるが、余裕で勝利する遠慮のなさ。その後羅成とやりあう姿は可愛らしい。女優さんに見えますが武技シーンは必見。豫劇すごい。曽祖父母の和解に立会い涙する感動やさん。
龍 建(飾:陳 東)、史大奈(飾:王志責)
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『穆桂英』で楊宗保が穆に惚れられやり込められた後、結婚するなど、中国演劇上では女将軍が強いですね(そして
夫が形無しですな・・・)。このへんが戯曲が文学より低く見られてきた原因とか?孔子の教えに反してるし。作中、女性の武技シーンは豪華で見ごたえがあります。それにしても馬金鳳はとてもかわいくて、他の作品も絶対見なくちゃ。最後の和解シーンは曽祖父母に手をつながせようとする孫など、相当恥ずかしいです。微笑ましい・・しかし京の正妻がどうなったんだろ?