yesasiaで見つけた、浙江平陽県小百花越劇団演出。舞台版の生録画らしく、ずっとフラッシュ撮影の光が耐えません。臨場感抜群・・。題材はその名もズバリ『紅楼夢』の尤姉妹のエピソードから。「二尤」だけに
前半/尤三姐と柳湘蓮、後半/尤二姐と王煕鳳が描かれています。唱は安定した美しさでした。
【あらすじ】
尤姉妹は賈府の正嫡、賈珍の正妻・尤氏の義理の姉妹。親戚つながりで出会い妹の尤三姐は賈珍の妾に狙われますが、一途に愛した柳湘蓮への思いを遂げるため自刎します。その後、尤二姐は賈レンの二房となり別宅に囲われていたのが、正妻の王煕鳳の陰謀により賈府へ迎え入れられ、虐待されなくなります
。『紅楼夢』60-70回は完全にこの姉妹が主役。
順序としては尤二姐と賈れんの秘密の結婚→尤三姐と柳湘蓮の縁談、破談→それを苦にした尤三姐の自殺→煕鳳により尤二姐が賈府へ→虐待により流産、尤二姐の自殺。林黛玉と賈宝玉の純愛で有名な同名小説ですが、
尤姉妹のエピソードは別立ての小説を後から挿入したと言われるほどテイストが違って因果応報、教訓話というか。
以前、黄梅戯『王煕鳳与尤三姐』(※)を見たら3時間の舞台で尤二姐のみの話。越劇版は2時間に倍の内容で展開が早い!戯曲ののんびりさより好きかも。ただ外見が・・
尤三姐が前髪なしでシロウトさんに見えず、売れっ子芸者みたい。柳湘蓮に思いを寄せる仕草も壮絶ですが、まあそこはご愛嬌。しかし煕鳳は貫禄がありすぎ賈れんと夫婦に見えません。
セットはシンプルで、音響、効果音、スモーク、様々な色のライトでの演出が珍しかったです。
小道具も鴛鴦剣(柳湘蓮が結納の品として差し出した)くらいしかなくて、椅子も机も寝台もぜんぶ同じ台で代用。背景も単純な緞帳のみ。浙江小百花の楊小青演出で『西廂記』なんかがブレークして流行?8・90年代は越劇の小百花時代といいますが、県単位でも劇団があるんですね。
いつも気になるのですが、「尤二姐」「尤三姐」で「尤大姐」は尤氏なんですよね・・確か尤氏の父と尤姉妹の母が再婚し、姉妹は連れ子で尤氏と血縁はなしと・・難しい。
ジャケットが微妙で心配したら、女優さんも衣装もきれいだし杞憂でした。越劇で、今回の煕鳳のように悪役が最後に勝つ演目はあるんでしょうか。普段触れられない(と、思う)一夫多妻も明記されてるし・・
面白かったのはラストの自殺。原作や黄梅戯では「死ぬ時は堂々と」と髪を結い衣装を整えますが、ここでは反対。「賈府の着物なんか」と母から送られた服をまとい、
髪には尤三姐から送られたシンプルな花飾り。前を見据える目は、普通の弱っちい尤二姐とは全く違ってかっこいい!姉妹の絆バンザイ。それで最後には幽霊も総出演。
※内容から明らかに『王煕鳳与尤二姐』なのですが、ジャケット印字は「尤三姐」。