文革直後の1980年、上海越劇院の大御所総出演で作られた越劇映画『西園記』。宝玉役で有名な徐玉蘭が小生、ヒロインには王文娟(林黛玉)、老生には徐天紅(賈政)、侍女の花旦に孟莉英(紫鵑)と『紅楼夢』でも大役を果たした早々たるメンツ。
それまでのモノクロやカラーでも屋内風セットの映画から、オールロケで自然な背景の記念碑的作品でした(たぶん)。このVCDはその演目の結末部分、一番盛り上がるところのダイジェストです。舞台版、セットは室内で固定。
【あらすじ】嚢陽の才子・張継華は杭州へ留学し、趙礼の家に寄宿します。ある日西園と呼ばれる屋内庭園で出会った王玉真に恋をし、てっきり趙家の令嬢・趙王英と勘違い。その後、当初から病床にあった王英は亡くなり、
継華は悲しみのあまりひっそりと夜に弔いの詩を読みます(夜祭)。しかも王英の義妹と結婚する事になり、亡くなった相愛の女性を思う継華は渋りますが、侍女の香筠の働きにより誤解は解け、2人はめでたく結婚します。
貴重な老生の出番の多い演目で、徐天紅の代表作としてよくあげられており老生の唱が堪能(右下写真)、取り違え&一目ぼれ&ラストで発覚、大円満と陳腐ですが面白い。しかし、勘違いされた挙句に若いみそらで亡くなる趙王英が可愛そう。張継華と王玉真は好きな相手と結婚できて嬉しいだろうけど。録画用に作られたような感じですが、拍手がところどころ入っていてナイス!素人の私には、演技のどこがみどころや大技かわかって嬉しいです。
小生・張継華はやはり徐派のトップ銭恵麗。亡くなった恋人を思って夜祭だのぼけっとしててもいい人かも。そして大立役者の侍女・香筠に張永遠梅、彼女は新版紅楼夢でも紫鵑を演じていたので、孟莉英の後継者なのかな?継華にくってかかったりあしらいつつおだてたり、なだめすかして・・・と可愛らしいし見ていてしっかりしてんなあ、と
理想の侍女かつ小姐の女友達って感じです。清楚で整ったあっさりめの顔もいいんだよなあ・・トップの写真は孟莉英が演じる香君(※)。
※ この演目、オリジナルでは侍女が「香君」がこのVCDでは「香筠」に、
ヒロイン「王玉貞」が「王玉真」に。改編したのか手元の資料の間違いか。
1982年映画版『西園記』
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