『江山美人』は59年ショウ・ブラザーズ作品で、李翰林の代表作。唄あり踊りありのミュージカル風、安徽省の戯曲「黄梅調」映画の金字塔です。主演は当時の香港映画界の寵児、林黛と趙雷。
趙は「皇帝俳優」と呼ばれたほど、青年皇帝役でならした俳優さん。今のチャングムの王様の韓国俳優さんみたいな感じ?本土生まれ、銀行員を経て香港映画界入。容姿を買われ時代劇で人気、60年代後半からは台湾へ拠点を移し、96年に亡くなりました。
林黛は当時「一代影后」=映画の女王、と呼ばれた女優。香港スター
姜大衛も出ているらしいのですが、クレジットにもいないしどこに出るんだろ?ちなみにこの映画、日本公開もあり。カンフー映画で有名なキン・フー監督が、主人公の弟・大牛を演じています(たぶん)。
【ストーリー】明代一の
愚帝と称される正徳帝の時代。20歳の彼は政治が退屈で仕方ありません。お忍びで出かけた江南で居酒屋の娘の李鳳と恋に落ち、李鳳は妊娠。しかし皇帝は紫禁城へ帰る事に。皇后として迎るからと約束しますが、彼女の事をすっかり忘れ後宮で遊ぶ皇帝。月満ちて男の子が生まれ、李家は町中の冷たい視線を浴びます。弟の大牛はそんな姐を不憫に思い、単身遠く都へ。
大道芸で事の顛末を訴え、宰相の行列に姐と甥について注進する大牛。民間から皇后を迎えるのに難色を示した母后も、宰相の養女にする事で妥協。江南の李家に宮廷から迎えが行き、李家は総出で大喜び。李鳳は息子を残し、先に宮城入りする事になりました。
しかし道中に嵐が吹き荒れ、宮城へ着いたとき李鳳は息絶えていました。
手には皇帝の残した詩入りのハンカチ。皇帝は悲しみにくれ、劇終。てっきり喜劇で、皇帝と村娘が結ばれる話かと思っていたら悲劇でした・・・。でも弟の大牛のひたむきさ、兄と嫂が未婚の母はとなった李鳳を見守り子どもを育てる優しさ、江南に残され忘れられた李鳳の悲しみと、最期は泣きまくりで見ました。この時代の
ショウブラお馴染み俳優さんも総出。セットもこの時代の映画らしく、「屋外の設定だけどいかにもな室内セット」で古い映画ズキにはたまりません。さすが娯楽時代劇の巨匠、と思いつつも非道な皇帝に怒り心頭です。ラブストーリーというより、家族愛を説くドラマだったのかなあ。
※写真はキン・フー演じる大牛。いい人です!