清朝皇族女性紹介の9番目、現在アラフォーの方なら幼少期トラウマ映画で彼女を見ているかも。庄静皇贵妃は死後、生前メジャーな呼び方は麗妃他他拉氏。
時代劇の巨匠李翰林監督の80年代映画、西太后を劉暁慶が演じた《火焼円明園》《垂簾聴政》(二作は編集され「西太后」のタイトルで日本公開)。俗説を大いに取り入れた娯楽大作です。
その中での前漢初代皇后の呂后からとったであろう人彘(ヒトブタ)シーン、西太后は麗妃の手足を切り落としたまま酒壺に。全権掌握した日の夜、西太后は麗妃の壺を持ってこさせて…。
あの頃は台湾香港のキョンシー映画やドラマといい、本国よりも日本でチャイナホラー時代劇が流行っていたような気が。映画続編《一代妖后》では、嫁の同治帝皇后阿魯特氏を天井釣りにして落とす拷問とか。インパクトありすぎ。
阿魯特氏の死因に不審な点はありますが、天井釣りは多分されてない。麗妃も西太后は彼女を殺さず人彘にもしておらず、他他拉氏は54歳までとむしろ長寿。もちろんきちんと治療を受け、葬礼も格式通り。
というのも、西太后が咸豊帝唯一の成長した男子の母なら、他他拉氏は唯一の娘の生母。ドラマだと寵愛のみで決まるかのような印象がありますが、子どもの有無は重要な位階特進理由なので、一人娘の生母というのは大きかったようです。
咸豊帝は一人娘を溺愛、高い乳児死亡率もくぐり抜け大公主は成婚。その公主こそ清朝で最後の「皇帝の娘の公主」、荣安固倫公主。以前にあげた「最後の清朝公主・荣寿固倫公主」は皇帝の孫、親王の娘。血縁から見るとひとつ格下。
清東陵などは清朝滅亡後にそっこう墓荒らしにあい、財宝盗まれるわ遺骸はガソリンかけて焼かれるわ散々なのですが、他他拉氏も確かそうだったのかな。乾隆なんか頭ちょん切られたと聞いてますが大胆。覇道皇帝もそうなっては肩なし。
麗妃を演じた周潔はバレリーナ出身の女優さん、舞踊全般が得意、彼女が主演した映画で玄宗皇帝考案という《霓裳羽衣曲》を披露。ほか時代劇で様々な舞踏シーンが有名。現在はアメリカ在住、舞踏指導家だそう。
麗妃は本当に西太后に殺されたと思われているようで、殺したかはわかりませんが長生きしたのは本当。そこだけは声を大にして言いたい。余談ですが演じた周潔、他の映画/役だけど、歴代楊貴妃役で一番はまり役だと思う!
あんなシーンがあるのに、当時は21時スタートの洋画枠で普通に地上波放送。すごい時代。そして庶女だろうが孫だろうが固倫公主(本来は嫡女)にしてしまう清末の宮廷、おおらか。人数が少ないせいもあるかもしれません。