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映画「妖婆の家」(1965)

映画「妖婆の家」(1965)_d0095406_1836931.jpg  ジャケットはカラーですが私が見たのはモノクロ版。名女優にして悪女といえばのB・デイビス主演。「何がジェーンに起こったか」路線なのは明白だし、ハマーフィルム作品で当然とはいえ、「情婦」(原題「検察側の証人」)、「私は殺される」(「間違い電話」)に並ぶ残念な邦題・・・前者と同じでセンスがないし、後者と同じくサスペンスなのにネタバレ。原題「The Nunny」だから、タイトルだけだと乳母で、メリーポピンズみたいなイギリスのナニーが題だから怖いのに。

【あらすじ】  イギリス上流階級のある家庭。家には娘の写真が飾ってあるが、子どもの姿はまるでない。いるのは泣きじゃくる妻、それを叱責する夫、落ち着き払ったメイドだけ。その日は長男ジョーイが施設から帰宅を許されたお祝いすべき日。ジョーイは問題行動から施設に2年入れられたのを、治癒したとみなされたのだった。しかし肝心のジョーイは帰宅を嫌がり、老婦人への強固なまでの悪意を持っている。それに動じないメイド兼乳母は長年仕えており、夫妻から全幅の信頼を寄せられているが・・。



     イギリス英語全開、ホラー仕込みのくどいまでの恐怖演出、さすがハマーの面目躍如といった雰囲気のある作品。今からすると刺激が少ないかもしれないけれど、デイビスの怪演と子役の素晴らしさでなかなかよくできているかと。乳母なしには成り立たないかに見える家庭が実は、その乳母によって壊される矛盾。シンプルに描けばもっと時間を短くできるのかもしれませんが、このタメが作品らしさを醸し出していると思うので、のんびり見るといいかも。モノクロサスペンスの良さをよく体現しています。

【役名/俳優】
ナニー(実名なし).....ベティ・デイビス
気が付いたら名前が出てきていない。ジョーイ母に子どもの代から乳母として仕え、現在はその子どもたちの乳母かつ一家の家事を担うメイド。厳粛ないかにもイギリス乳母、完璧な仕事ぶり、悪意をぶつけるジョーイにも冷静さを崩さない姿は一瞬迷うが、ジョーイの言い分も真実味を帯びてくると、どちらの言い分が正しいのかハラハラ。目の演技がコワーイ、デイビスの雰囲気だけでもすごい。日本時代劇の藤田まこと並みに存在感抜群。実は娘がおり放置20年以上、その死に際に呼び出された2年前から悲劇が加速。抑えていた感情がラストで爆発する。

ジョーイ
一応主人公。ナニーの本質を見抜き妹事故死の真相を知るが、かえって冤罪をかぶせられ施設に入れられる。度を超したいたずらは憎ったらしく、強情な反抗ぶりと相まっていかにも大人から嫌われそうな子ども。帰宅したもののナニーを警戒し両親をてこずらせる。見ていて好感をもてず、ナニー対ジョーイのはずが、どっちも応援できないという困った事態に。妹への仕打ちには思いやりがないし、事故死の際の対応も納得いかないんだけど、10歳だと仕方ないのか。

ジョーイの両親
外交官の父と専業主婦の妻。ナニーは妻とその姉の乳母でもあり、長年この姉妹に仕えてきた様子。高圧的でいかにもイギリス紳士、しかも不在がちの夫、妻は情緒不安定。生活全般も精神的均衡もナニーなしには成り立たない。最後、ジョーイは悪くなかったと笑顔で終わるが。ナニーに毒を盛られた母は大丈夫なんでしょうか。あれだけナニーに依存していたら、いざナニーがすべて悪いとわかっても現実を受け入れられないのでは。そのへん結末がアッサリしすぎて物足りない。

スージー
2年前事故死したジョーイの妹。ナニーに全幅の信頼を寄せているが、ナニーが留守にした際、誤って浴槽で溺死。「ナニーは私を大好きよ」「ナニーは子どもたちを置いて出かけたりしないわ」等、お兄ちゃんにかみつくが、遊んでくれとせがんだりするのは素直で微笑ましい。でもそのまま成長したら母の二の舞だったか。生前の愛らしさを見ると胸が痛みます。子役ウマイ。

ボビー.....パメラ・フランクリン
ジョーイ一家の階上に住む14歳の少女。父は医者、ちょっとグレ気味。ジョーイにナニーの陰謀を知らされるが信じない。二人のやりとりはこの映画の清涼剤。のち「ヘルハウス」などホラー路線を突っ走るパメラ・フランクリンの新人時代が貴重。ブルネットの豊かな髪とキラキラした瞳、そばかすがキュート。60年代らしいビッグ・ヘアがよく似合います。

ミス・ペン/ジョーイ伯母
ジョーイ母の実姉で独身。ともにナニーによって育てられるが、妹程はナニーを信頼してない。心臓病を患い、お金に明かせて退廃的に生きており、睡眠薬と心臓病の頓服を常用。「いつ死ぬかわからないわ」と厭世的になるわりに、ナニーの真実に気づいたらすごく弱くてびっくり。もう少しアクがあるかと思っていたのに、過剰なほどの発作演技には拍手だがあっけなかった。

ジャネット
ナニーの実娘。25歳。仕事命の実母に放置され、貧民街で暮らす。妊娠したものの体が弱く産むことはできないので、闇堕胎を試みるがそれによって死亡。というか、この人が死ぬのがイマイチ急でわからなかったんだが・・。出すならもっと練ってくれ。死に際、「生きているうちは会いたくないが、死んだら知らせてほしい」と医者に頼み、ナニーが屋敷を空けることになる。

ヤミ医者
ジャネットの部屋にいて、どうやら堕胎をしたのはこの人らしい。瀕死のジャネットを14時間見ていただけの人非人。ナニーに電話し窮状を知らせ、ナニーは子供たちを置いて屋敷からかけつけるが、それが破綻のはじまりに。
by hungmei | 2014-11-23 18:30 | 5雑感など | Comments(0)
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