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映画「深夜の告白」(1944)

映画「深夜の告白」(1944)_d0095406_10272576.jpg  巨匠ワイルダー監督初期の傑作、フィルム・ノワールの頂点にあたるモノクロミステリー。長らくヒッチコック監督と勘違いしていました。B・スタンウィクがアカデミーノミニーだというし、すごく楽しみに視聴。結果、同じスタンウィック出演ミステリなら「私は殺される」(1948)のほうが好みだけど、十分面白い!ドイツ表現主義→フィルムノワールというのも認識しました。道理でなんか似ている--;特にモノクロやミステリーが好きでない人にもお勧めできる佳作ですが、アカデミーは全部逃しているのは製作側がやや左寄りだからか?



【あらすじ】  成績トップの生命保険外交員ネフは、ある日顧客のディトリクスン夫人から求められ不倫に陥る。夫人の名前はフィリス、先妻の元付添看護師だった。お金目当てにディトリクスンと結婚したフィリスは、ネフと共謀し夫を殺したうえ、保険金をせしめようとする。しかもネフは長年の経験から、保険金の最高額を狙うと完全犯罪をもくろむが・・・。



     1927年発生のルース・スナイダー事件をモデルに、J・M・ケインが「Double Indemnity」として発表した小説が原作。映画原題もそのままで直訳は「倍額保険」。スナイダーは犯行が露見し、電気椅子で処刑されたことで有名ですか、倍額保険は、鉄道事故ならほかの事故死より倍額の保険金を払うというもの。自動車事故などより鉄道のそれは低いという事で保険会社が設けたらしいが、その結果がこれか。でも保険で利益をあげるには普通なのかな。

     倒叙法で犯人もわかるし、保険金殺人ものの古典だけに予想はつきますが、100分の一つ一つのシーンが秀逸で飽きません。始めはどうせ失敗するのねー、としか思っていなかったけれど、主人公と共犯者の、計画実行後の関係の変化や徐々に明かされるさらに複雑な人間関係、継娘ローラやその恋人で不良のザケッティが絡み、保険会社内でも殺人を疑う声が次第に大きくなって・・・。徐々に追い詰められる様と、どこから完全計画にほころびが出るのか、かと思いきやあわや露見ということろ、空振りでハラハラさせられるシーンetc、うまくできてます。ヒッチ風味とも思ったがやっぱりまた違う。

【役名/俳優】
ウォルター・ネフ .....フレッド・マクマレー
保険外交員、独身35歳。成績トップが常で長身のイケメン。保険金殺人だけでよしておけばいいのに、経験と頭脳にうぬぼれたのか、わざわざ最高額を狙おうと楽しげに計画立案。成功してればいいけど結果失敗なのでなんだか間抜け。はじめ計画を主導しているつもりが、徐々にフィリスに利用されているだけではと疑心暗鬼になり、背信に気づいてからはフィリスを殺し国外逃亡を図る。当時の俳優さんにはこれでも十分インモラルだったらしく、さっぱり決まらずもめた後、ディズニーコメディ映画の常連マクマレーが選ばれたらしい。よくはまっていましたし、この後も安定した俳優人生で、映画とは真逆。

フィリス・ディトリクスン .....バーバラ・スタンウィック
夫とは年齢差があるディトリクスンの後妻。不倫を迫ったのは自分だが、殺人を提案したのはネフ。しかし実はネフを利用していただけだとわかって問い詰められると、「利用するだけのつもりが愛してしまったの」。至近距離でネフの肩を撃つが反撃され殺される。40年代ハリウッドでは斬新な悪女描写で、ブロンドウィッグを使い役作りに臨んだらしいが、ヅラ具合が半端ない!演技は完璧なのに・・・。後はキャラクターが掘り下げ不足かも。ミステリアスで面白いがこの人の真意はなんだったんだか不明。

バートン・キーズ ....エドワード・G・ロビンソン
保険調査員で保険契約の精査を行う。腹の中に小人が住んでいて、アヤシイ請求には第六感が働いてそこから徹底的な調査に入る。保険金会社の防波堤、かつその自負もあり調査能力は折り紙つき。実際、ネフはキーズを騙せるかどうかで勝敗が決まると漏らす。ラスト、ネフの告白を廊下で聞いており、官憲を呼ぶ。このへん男同士の絆なんだろうがよくわからん。でも上司がネフへの疑いを抱いたときに絶対ないと熱弁するところは感動。演じるのはギャング役が有名なユダヤ人俳優さんで、一筋縄でいかない感じ。この映画の重要な一角を担っています。

ローラ・ディトリクスン ....ジーン・ヘザー
フィリスの継娘、ディトリクスン氏と死亡した先妻の間の一人娘。金持ち老人に一人娘も鉄板。一人息子より動かしやすいかな?実母である先妻をフィリスが謀殺した瞬間を目撃しており、フィリスには懐疑的。父が再婚したからにはとそれを黙っていようとするが、だめんずにひっかかった挙句、ネフにも利用されよりかかっていく。ちょっとウザイ--;でも事件後、一番得するのはこの人だろうなあ。もともとその権利アリだけど。実母はフィリスに布団はがれ看護放棄されて肺炎で亡くなったらしい。

ディトリクスン氏...トム・パワーズ
初老(51歳)の実業家でフィリスの夫。先妻は肺炎で死亡、その際の付き添い看護師が現妻フィリス。典型的トロフィーワイフなのか、本人の性格は悪いし偏屈、実娘からも嫌われ、ハーバード大同窓会には怪我してもいくじいさんで、映画における性格の悪い金持ちの要素を集約したような人。妻フィリスにのせられ鉄道で同窓会に行くことにし、その道中で妻とネフに殺される。当時らしく、殺されてもかわいそうに思えないわかりやすいキャラクター。

ニノ・ザケッティ...バイロン・バー
ローラの恋人、典型的だめんず。今は不良プーだが、元医学生。名前からしてイタリア系?俳優さんも黒髪にエキゾチックな容貌。実はフィリスの家に入り浸っており、それをキーズから聞かされたネフは共犯関係の破たんを確信。どうやらローラとの関係が先で、それに付け込もうとしたフィリスから誘われたみたい。大事な役回りなのに描写が少なくイマイチよくわからない。ラスト、闇夜に屋敷に呼び出されており、フィリスを返り討ちにしたネフと庭ですれ違いった折、ローラを励ますよう頼まれるが・・。

ジャクソン....ポーター・ホール
ディトリクスン転落事件の証人でオレゴン州在住。列車内で、ネフが扮する偽ディトリクスン氏を唯一はっきり目撃した人。観覧エリアで対面し会話するが、タバコケースを取ってくるよう頼まれ、その間にディトリクスンンは誤って列車から転落という筋書き。調査のためキーズに呼ばれオフィスに姿を現し、この人がいつネフを偽ディトリクスンと見破るのかヒヤヒヤですが、作中ではついにその瞬間は訪れず。しかし若い男とははっきり記憶しているので、今後の裁判で活躍するでしょう。
by hungmei | 2014-11-23 10:42 | 5雑感など | Comments(0)
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