2018、19年《延禧攻略》とともに最も話題となった周迅主演の清朝宮廷劇。自分視聴用メモ。ネタバレありなのでご注意下さい!
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【予備知識】
※后妃の位階
→皇后(正妻、一人)、皇貴妃(妾、一人)、貴妃(二人)、妃(四人)、嬪(六人)、貴人(以下定数・品階なし)、常在、答応、官女子
※皇后がいる場合、皇貴妃はおかないのが原則。皇貴妃は皇后不在時に後宮を統括することが多い。
そのため継皇后輝髪那拉氏(このドラマの如懿の原型)が断髪して抗議したのは、自分という嫡后がいるにも関わらず、魏佳氏(衛嬿婉の原型)を皇貴妃にしたからという説もある。
※大答応とか、学生なんて妃嬪位階名もあるらしいです。でもよくわらないので割愛。
※親王、郡王の妻妾位階
→嫡福晋(正妻、一人)、側福晋(妾、親王は四人、郡王は三人まで)、庶福晋(以下定数なし)、格格
※皇族でも爵位が貝勒からは福晋でなく嫡夫人(正妻)らしいが、ドラマではそうでもなかった。
※皇子、皇女の爵位、封号
皇子は満州語音写で「阿哥(アーゴ)」、そこから親王ー郡王ー貝勒(ベイレ/ばいろく)ー貝子(ベイズ/ばいし)ー奉恩鎮国公ー奉恩輔国公…と、個人で得られる爵位は変わる。かつ、特定の恩恵を受けた数家以外は、一世代下がるごとに爵位も一つ下がるので単純に行くといずれ無位無官になる。
皇女は「格格(グーグ)」、正式には嫡出なら固倫公主、庶出なら和碩公主だが、厳密でない。元に史実で乾隆七公主は固倫公主、同母妹の九公主は和碩公主。従来「和親公主」は和睦のため外藩王に降嫁し、たいてい政争に破れた皇族の娘が公主に封じられるのがオチ。
しかし清朝の满蒙联姻に関してははてはまらず、対モンゴル政策から外藩親王や郡王に公主が下嫁(降嫁)するのが常。それも北京に公主府(公主の邸宅)を持ち夫婦で住んでいたりする。
※身分差について(非常にあやしい知識)
おおむね、皇帝ー皇族/宗室ー旗人、包衣(特権階級)ー平民ー奴婢ー賤民
旗人包衣までは満族、蒙古、漢族の一部、朝鮮系など。清朝成立前から愛新覚羅氏に帰順した人々。
大多数の漢族、少数民族は平民や賤民、もとが平民でも売られて奴隷になれば奴婢となり、身代金返済まで科挙が受けられない、婚姻、職業制限などがある。高晞月が阿箬を「一日為奴終身下賤(一日でも奴隷となった者は、たとえ身分が回復・上昇しても一生卑しいまま)」と罵ったのもこうした背景。
※八旗
清の特権階級における軍編成、かつ戸籍。どんな女子供でもどこかの旗に属する。軍服や軍旗の色も揃え、鑲は赤い縁取りだが、正紅旗のみ白い縁取り。
・上三旗(皇帝直属)
正白旗、正黄旗、鑲黄旗
・下五旗(旗主は貝勒)
鑲藍旗、鑲紅旗、正藍旗、正紅旗、鑲白旗
后妃をだした場合、下五旗所属だとその氏族のみ上三旗に引き上げられることを拾旗という。西太后もこれ。ドラマだと高晞月が八旗包衣出ながら貴妃となり拾旗された。
この八旗×満州、蒙古、漢軍とあるため、計二十四旗。名誉なことがあると漢軍八旗から満州八旗へ編入されることも。
※選秀女
皇帝/宗室妻妾を選ぶ戸部主催と、宮女/王府侍婢を選ぶ内務府主催がある。前者は原則三年に一度、後者は一年に一度。受験対象は前者が旗人、後者は包衣(多分)。
包衣は満州語の「奴隷」だが、高晞月父の高斌のような総督(一品、とても偉い)を務める人材を輩出。紅樓夢作者の祖父、曹寅も漢人包衣ながら康熙帝乳兄弟、江寧織造(高官)となった。
※宮女、太監(宦官)、慎刑司など
※受験資格
宮女は特権階級出身。宦官は忌み嫌われることや満漢人口差から、基本的に特権階級はなれないと認識していました。しかし八旗官員が罪を得ると辛者庫奴婢になるそうで、宦官になるのかな。康煕帝は「太監最為下賤(宦官はあらゆるものの中で最も賤しい)」とのたまっているからどうなのか。
※慎刑司、宗人府
慎刑司は奴隷対象で太監などの監督、宗人府は皇族の監督、処罰など。《如懿伝》の慎刑司は一時的な罰や尋問。罪が未確定なのに拷問で死ぬ、とかいいのだろうか。
※太監
宦官=太監のように思えますが、実際は小さい時から勤め、太監は一人前になってから。侍童→監丞→小監→太監。かつ切除手術での死亡率も高い。
事後がうまくいかず尿毒症で死亡することも。成功し勤めだしても老公(宦官への侮蔑表現)臭いといえばオシッコ臭いの意味。引退した宦官の養護施設も。
最も不孝な跡継ぎを残せないことを選択したため禽獣と同じ、そのため宮女はイエスの意味で「是(shi)」と言いますが、宦官はそれも許されず「嗻(zha)」。木で模した性器をお棺に入れたり。
※清朝後宮の特色
・明の宦官跋扈の前例から、宦官は文盲であること。北京からは出ないこと。出たら死刑(事実、西太后のお気入り安徳海が北京を出て、東太后らに処刑された)。
・歴代王朝でも後宮の規模が小さい。宮女は多くて三千人、明代の十分の一。また宮女が一生奉公でなく、二十五歳を過ぎて条件を満たせば退職可能、大概結婚する。
・ピロートーク抑制か、夜伽の仕方が厳格。敬事房が御寝を管理し、夜伽に呼ばれた妃嬪は裸のまま簀巻きにされ寝室に運ばれ、制限時間付きで皇帝と性交。
時間厳守、敬事房などの宦官が容赦なく外からお時間です!と追い立てる。場所も専用の部屋が使用され、事が済むと妃嬪も皇帝も自分の居住宮へ戻るドライさ。
※満蒙の氏名ルール
漢族と異なり「姓」という認識は薄く、「ーー氏」いった場合、その指す範囲はより広い。かつ、個人名のみを使い、氏族名は公式な場でも必要がなければ使わない。英語で言えば「Clan」。
「ーー那拉氏」や「ーー覚羅氏」と、末尾が同じなのは親戚みたいなもの。葉赫那拉氏の「葉赫」は葉赫部(女真族統一、後金建国のためヌルハチと激戦を繰り広げ平定された)だったから、烏喇那拉氏も「烏喇」部からきている。ちなみにどちらも部落の地名、葉赫那拉氏は葉赫河から。
例)富察皇后の弟、傅恒は富察・傅恒、その息子は富察・福康安。佞臣で有名な和珅は録祜禄氏なので、録祜禄・和珅。
※満州八大姓
という名前はありつつ、文献でバラバラ。
ドラマで出たのは富察(フチャ)氏、録祜禄(ニウフル)氏、佟佳(ドンギャ)氏、伊爾根覚羅(イルゲンギョロ)氏、西林覚羅(シリンギョロ)氏、伊拉里(イラリ)氏、烏喇那拉(ウラナラ)氏、輝髪那拉(ホイファナラ)氏、葉赫那拉(エホナラ)氏、薩克遠(サコダ)氏、喜塔腊(ヒタラ)氏、他他拉(タタラ)氏、董鄂(ドンゴ)氏、索綽洛(ソチョロ)氏、赫舎里(へシェリ)氏など。
蒙古系では博爾済吉(ボルチギット)氏、阿魯特(アルート)氏、珂里葉特(ケリェテ)氏。珂里葉特氏は他であまり聞かない。「海」氏ともいい、珂里葉特氏の最初の徽号はここから。博爾済吉氏はチンギス・ハーン弟の阿巴噶が始祖の名門で、本家は清朝でも親王に封じられ尊重された。
満族以外でも旗人包衣はいるし、特に后妃や国母を出すと、満族風にーー佳氏、と改姓が許され、賜姓という。
例)金玉妍のモデル淑嘉皇貴妃金佳氏は、朝鮮系包衣出身の金氏。三人皇子をもうけたことから賜姓で死後に金佳氏となった。蘇緑筠のモデル純恵皇貴妃蘇佳氏も、漢人蘇氏から蘇佳氏へ。清朝皇族は満蒙漢の血を受けた。
噂だと百回以上あったエピソードが八十七話になっており、検閲で話数が減るのは中国時代劇の常とはいえ、それ以外の要因で大幅改変かも。セリフに違和感を覚えてネットで検索、こんな撮影済みエピソードがあった、とわかる。
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●乾隆妃嬪主要六人、他主要人物
・烏喇那拉・如懿(名前)/飾:周迅
宝親王側福晋/嫻妃/嫻貴人/庶人/嫻妃
嫻貴妃/嫻皇貴妃/継皇后
延禧宮(東六宮)、翊坤宮(西六宮)に居住。おばの死をきっかけに、義母の録祜禄氏から「如懿」の名を下賜。モデルは乾隆の継皇后輝髪那拉氏。讒言され冷宮落ちするも、冤罪がはれ皇后に。清廉潔白だが敵には立ち向かう。
その後蜜月を送るも、調子に乗った皇帝に諫言。禁足にされたのち永琪暗殺(冤罪)で廃后。誤解がとけ復位されるも拒絶し病死。常に冷静、果敢に諫言する姿が凛々しい。ハスキーボイスが素敵で、周迅はやはり演技巧者。
・衛嬿婉/飾:李純
花房侍婢/大阿哥侍婢/嘉妃侍婢/衛答応
衛常在/炩貴人/炩嬪/炩妃/炩皇貴妃
追諡炩懿皇貴妃
正黄旗包衣出身、はじめ宮女。昆曲がうまい。嘉慶帝生母の孝儀純皇后が原型。凌雲徹と幼馴染で求婚されるが、宮廷での栄達を選んた。しかも何度失寵しても不死鳥のように蘇る。最多の子女をもうけ皇貴妃となるも、人望薄く後宮を統括できず。
しかし太后からすら疎まれており、任せる方も変。皇儲指名の書類偽造が露見し余罪も告発、逆ギレし「皇后こそあなたを思っているのに幽閉とは!」と悪態をつく根性は天晴。そこまで楯突いた人はいない。
・愛新覚羅・弘暦/飾:霍建華
雍正帝四阿哥/宝親王/乾隆帝/太上皇
生母は宮女の李金桂だが、太后録祜禄氏に養育。嫡母の烏喇那拉氏が如懿のおばのため面識が有り、正妻にと望むも却下。史実では太后実子、同母姉妹はなし。気まぐれ、新しもの好き、飽きっぽい。
富察皇后が死去すると無子(当時)の如懿を皇后に。後には太上皇、如懿の遺品の緑梅を眺め死去。感情抑制に問題があり猜疑心も病的、後半は太后でさえ持余し気味。三阿哥と純妃はこの人が殺したも同然。
・珂里葉特·海蘭/飾:張釣甯
宝親王府綉娘/庶福晋/海常在
海貴人/愉嬪/愉妃
延禧宮(東六宮)に居住。如懿の義姉妹、皇帝より誰より如懿のことが大好き。如懿に向けた「姐姐!」が耳に残る。五子永琪の生母だが、産後は自発的にお褥辞退。モデルは同名妃嬪で、綉娘(お針子)ではなく始めから妾。
初期は高晞月と咸福宮住まいで虐待されるが、如懿の冷宮堕ちを機に権謀術数を身につける。しかも如懿のためなら凌雲徹賜死の実行役すらも厭わず。史実だと長命かつ蒙古八旗人。孫もいるし余生はのんびりできるといいなぁ。
・富察·琅嬅/飾:董潔
宝親王嫡福晋/孝賢皇后/追諡孝賢純皇后
長春宮(西六宮)に住む。モデルは孝賢純皇后。董潔は謀女郎(チャン・イーモウ女優)で正妻にふさわしい気品。如懿に嫉妬しつつ、名門出身の自分こそ正妻という自負から葛藤。そのドロドロは娘にも受継がれた。
ドラマでは悪巧みに忙しい上、生母の富察夫人がからプレッシャーをかけられ情緒不安定。臨終でも悪事への関与は否定し、如懿を継后にしないよう遺言するが…。頭は良くても要領が悪いか。史実では賢后で名高い。
・金玉妍/飾:辛芷蕾
宝親王格格/嘉嬪/嘉妃/嘉貴妃/嘉嬪/
嘉貴妃/庶人/追諡淑嘉皇貴妃
大極殿/启祥宮(西六宮)。朝鮮玉氏出身で母国を背負うと自負。モデルは淑嘉皇貴妃金佳氏、本来は朝鮮系包衣出。前半の主役はこの人と言ってもいいほどほとんどの悪事に関与し、赤い衣装で目立っている。
衛嬿婉につぎ子沢山だが、息子たちが後継争いから脱落し錯乱していく。衛嬿婉により冤罪を着せられてからはドツボに…。実は玉氏(王家?)ではないらしいが、カット部分がありよくわからない。失寵してからが見もの。
・高晞月/飾:童瑶
高斌の娘、包衣出身/宝親王庶福晋/側福晋
慧貴妃/追諡慧賢皇貴妃
威福宮(西六宮)。はじめ如懿より格下の庶福晋、しかし乾隆即位後は家勢で貴妃に。序列逆転してから態度激変、皇后や金玉妍らと図り如懿いじめ。モデルは同名妃嬪。
短慮で頭も性格も悪く、周りも貴妃だから尊重しているだけなのに気づいていない。死に追いやった阿箬の亡霊に悩まされ、皇后らから切捨てられ、死に際、皇帝に富察皇后の悪事を暴露するも無視された。
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