普通の折子戯(名場面ダイジェスト)かと思ったら、名優・徐玉蘭の選集テレビ番組のVCD化のようです。徐は『紅楼夢』で賈宝玉を演じ、黛玉役の王文娟と共演を重ねた名コンビ。冒頭には
徐玉蘭本人の秘話インタビュー入り。「関漢卿」は往時の音源に合わせ、本人による音配像。「西園記」は電影からの転載です。文革で抑圧されたシーンがちょこっとあり、迫害でご主人を亡くされた苦労が偲ばれます。
『彩楼記』から「評雪辨踪」
宋代。呂蒙正♂と劉月娥の新婚夫婦による痴話げんかの一段。お嬢様の劉はお嬢様だったが、両親の反対も押し切り、縁あって見初めた貧乏書生の呂と結婚。貧乏ながら楽しい新婚生活が描かれ、妻の浮気疑惑が誤解だとわかり、二人でニヤニヤするシーンです。
『関漢卿』から「獄中」
元代。戯曲作家の関漢卿♂は名作『とう娥冤』を執筆するが、その内容から有力政治家より妨害にあい、ついには投獄されることに。田漢の話劇が原作。尹桂芳も出ていました。前の作品とは一変し暗い獄中での悲壮な覚悟を歌ったまじめなシーン。本物のおじさんみたい。
『西園記』より「祭王珍」
1980年の映画版より。趙府に寄宿する張継華♂は、相思相愛の王玉真が死んだと勘違いし、夜に隠れて供養する。それを垣間見た玉真の侍女・香君は発奮し二人の仲を取り持つ。男性と侍女のかみ合わない掛合が楽しい、中国戯曲らしい能天気なドタバタ劇。
徐玉蘭の自伝についての過去記事
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徐さんが越劇を始めた1930年代は女優業=醜業とされ、長女なのもあり祖母に強く反対されたそうですが、それでも東安舞台へ。ご本人の普通話はやはり南方人ぽいしゃべりで、より若い越劇女優さんと比べると特に顕著です。インタビューでは、田漢の書いた「関漢卿」を見て、越劇でも悲劇をやろうと決めたのがきっかけと語っていました。やっぱり越劇のデフォルトは喜劇なんでしょうね。『西園記』では侍女役の
孟莉英(『紅楼夢』紫鵑役で有名)や、徐天紅(同じく賈政役)もよいです!