2000年
中国中外文化交流中心の文化紹介DVD。紅楼夢や三国志など中央電視台ドラマのソフト販売でお馴染みコニービジョンさんからジャケットを日本仕様にして発売されており、アラビア語・ポルトガル語・イタリア語・ロシア語・フランス語など言語も多彩。ディスク自体もNTSC・PAL両方に対応しており、珍しく表裏両面が読み込み画面になっています。最初、レーベル印刷がなくてびっくりしました(笑)。
原題は「中国戯曲芸術大観」で、その名の通り対外向けに中国戯曲の概要や歴史を40分で紹介しています。個人的には越劇や黄梅戯が詳しく紹介されているし、いろいろな劇種がいっぺんに見られて大満足。パッケージには京劇と川劇としかなかったので最初テンション低めでしたが、冒頭3分で黄梅戯の新版紅楼夢が出てきたのでご満悦でした。それに私の一番好きな黄梅戯女優・呉亜玲さんの「天河配」がBGMとして長く使われており、ファンとしては大感激(涙)。
内容は中国戯曲の歴史から始まり、その特徴、京劇の発展、衣装や行当について、300種を超える地方劇の概要とその中からピックアップしての詳しい紹介。中国戯曲は唐代にその原型をもち、宋代の市民階級の振興によって普及し、元・明・清の興隆を経ているとか。今でも王実甫「西廂記」や湯顕祖「牡丹亭」などが伝わっているそう。特徴としては、1・現実中心主義かつ現世利益的、2・小道具や背景よりも役者の演技によって時間・場所を表現、3・そして何より
歌舞や武技を伴うこと!そのためオペラとも言い切れない、中国独自の芸術であることが強調されています。
地方劇にも以外に詳しく、名前が出てくるだけでも20種以上。少数民族のチベット族やチワン族の演劇にも触れており、中でも浙江省の越劇・四川省の川劇・河南省の評劇・トリは新興、安徽省の黄梅戯について。越劇では銭恵麗や単仰萍が主演の「梁山泊与祝英台」「舞台姐妹」、黄梅戯は2000年梅花賞だった気がする韓再芬主演「徽州女人」(※)が紹介されています。特に越劇の楊小青演出「西廂記」は、900年続く中国戯曲に音響照明など現代舞台芸術を導入したことが高く評価されていました。茅威涛もいっぱい使われていて、さすがの小百花団長。「徽州女人」はその起伏のないストーリーと伝統歌舞の特徴を排した現代的な踊りがいいみたい。
分量的にはさすがに京劇が一番多く、カツラや衣装の種類、行当のメイクなど詳しく見られて良かった。練習風景の映像があるので、洋服での練習姿やスーツ姿の楽団を見るとすごい違和感(笑)。よく春節晩会でもあったけど、子ども京劇祭みたいなのがあるらしい。役者さんは生涯一劇種のみ学べるそうでそうで・・・。北京唯一の地方劇というのが紹介されていて、見てみたいです。明代を基調とする衣装の戯曲が多いのに比べ、辮髪に胡服・北京語の唄にあっさりメイクが珍しかったです。ただ字幕がないので、母語でも専門用語や中国語からそのままの単語を言われると何だかわからない(涙)。さすがの完成度ですが、戯曲晩会などからひっぱってあるらしく、全部映像ソフトもっているものばかりだったのでそこだけ残念です。
※黄
梅戯「徽州女人」は安徽省を舞台にした、20世紀初頭の中国で頻発したという結婚問題についてです。これすごく面白いと思うんですが、日本ではダイジェスト版しかソフトを見たことがない・・。20世紀初頭に多く起ったという、自由意志で結婚した男性とその妻と正妻と、3者の葛藤を描いています。確か魯迅もそうだったんだった。怖いのは、舞台のラストで婚家を出て行かざるをえなくなった正妻が笑顔なんですよ。怒って出て行くより空恐ろしいような。黄梅戯は越劇と違いほとんど男女共演ですが、このへんちょっと越劇にも通じる気がします。右下の写真はこの演目じゃないけどとりあえず韓再芬。ちなみに左下は黄梅戯の新版紅楼夢、馬蘭(宝玉)・呉亜玲(黛玉)主演。これもお勧め!