推理小説とその舞台化作品が原作の、50年代とは思えない時代先取り&怖いサスペンス。あらすじにひかれ視聴しましたが、それまで、ルロイ監督はアカデミー受賞を逃しがちな、ラナ・ターナーやクラーク・ゲーブルを見出した人くらいの知識。映画の主要キャストは舞台版からそのまま起用、そのためジェスチャーが大げさという感想も聞きますが、舞台好きな私にはこれくらいが程よい。ヘイズコードのせいで結末がだいぶ穏健に変えられていますが、後味が悪い昨今のミステリーは苦手なので(気晴らしにならない)、この時代のサスペンス大好き。
受賞:第14回ゴールデングローブ助演女優賞(E・ヘッカート)、ノミネート:第29回アカデミー主演女優賞(N・ケリー)、助演女優賞(P・マコーマックとE・ヘッカート)、撮影賞(ハル・ロッソン)。ロッソンはジーン・ハーロウと結婚していたことがあるらしい。
【あらすじ】 上流階級の主婦クリスティーンは夫と一人娘の三人家族で、理想的な夫、愛らしく性格も良い娘と一見完璧な家庭。夏休み、ローダの通う学校の遠足で生徒が事故死する。クリスティーンは娘の身を案じ死んだ少年を憐れむものの、次第にローダの挙動に不審を覚える。さらに、他ならぬローダが少年の事故死に深くかかわっているのではと疑問を抱くようになり・・・。
マコーマックもヘッカートもアカデミーを逃したのが不思議なくらい演技がいいです。それとヘイズコード時代に原作の救いのない結末はそのままで映像化できず、ローダが死にクリスティーンが生き残る様に変更。そして微妙なテンションのキャストあいさつと、ケリーによるマコーマックのおしりぺんぺんお仕置きシーンがラストに無理やり入っていて、接続がすごくヘン。それでも映画作ってくれたから御の字ですが。漫画でわたなべまさこ「聖ロザリンド」を連想しますが、映画が先なので、元ネタになっているのかな。犯罪者気質の遺伝、環境説について登場人物が論争し当時は話題に。
【キャスト】
クリスティーン・ペンマーク....ナンシー・ケリー
著名な作家の父を持つお嬢様で現在は専業主婦。性格は温厚、はつらつとした実娘ローダに比べかなりおとなしい。家主のモニカに強引に分析され、自分が養子ではないかと不安があると漏らすが、誰もが幼年期に抱く妄想と一蹴される。しかし、実は本当に養子で実母は著名な連続殺人犯、出生名はインゴールド・デンカー。兄は母に殺され、幼いながらも恐怖から実母の元から逃げ出していた。ローダのクラスメートが遠足で事故死した際、楽しげなローダに違和感を覚える。事態を把握してからは娘と無理心中を図るが失敗。大物舞台女優さんで、物憂げな表情とハスキーボイスで甘いしゃべり方が魅力的です。
ローダ・ペンマーク....パティ・マコーマッ ク
クリスティーン夫妻の一粒種。大人ウケは大変良いが、学校では書道コンクールのメダルに執着、獲得したクラスメートのクロードから無理やり奪おうとするなど凶悪な面を見せる。そして学校の遠足で彼を殴打しメダルを奪い、告げ口を恐れ殺害。実は以前、ご近所の老婦人もクリスタルボール目当てに事故死させたが、全く罪悪感を抱いていない。無理心中から生還と思いきや、件のメダルを探していたさ中、湖畔で落雷にあい死亡。
リロイ...ヘンリー・ ジョーンズ
アパートの使用人で見た目かなり危ないおじさん。ローダの本性を見抜き、撲殺の凶器からルミノール反応で血が検出可能と示唆を与え、それによりローダは凶器のタップシューズを処分する。「意地悪は意地悪の事がわかるんだよ」と言っていましたが、事の露見を恐れたローダの陰謀にはまり「事故死」するウッカリさん。死亡フラグとは思うがいざそうなるとガッカリ。気持ち悪い演技の光る俳優さんはペリー・メイスンの人。
デイグル夫人....アイリーン・ヘッカート
ローダの殺したクラスメート、クロード少年の母。自身はつましい出身で美容師。遅い結婚だったため、一人息子を失ったことでわが子を持つことは永遠に不可能に。クロードの事故死を疑い、ローダが何かを知っているはずとクリスティーン宅を訪れる。ゴールデングローブ受賞だけに、映画の中で一番お気に入りキャラです。ヘッカートは後にアカデミーも受賞し、この中では一番のビッグネームか。
リチャード・ブラボー....ポール・フィックス
クリスティーンの父。犯罪分野の著名な作家だったが、今では他ジャンルに移行、現在は海底油田について執筆中。犯罪ルポの取材中、連続殺人犯のもとから逃げ出した娘=インゴールド・デンカーを拾い秘密裏に養女クリスティーンとする。この人ががんばれば心中は防げたような・・。
モニカ....イヴリン・ ヴァーデン
一家のアパートの家主。離婚経験あり噂好きなせっかいおばさん。すっかり騙され彼女がローダをかばうたびイライラ。上流階級の老婦人といったいでたちですが、女優さんはかつてのセックス・シンボルらしく美人!ペットの小鳥をローダが狙っており、次なるターゲットだったのは確実。
ケネス・ペンマーク....ウィリアム・ ホッパー
クリスティーンの夫、ローダの父。陸軍大佐。夏休みは家族旅行のはずが、急な任務で旅行はキャンセル。1か月ワシントンDCに単身赴任中。クリスティーンとはアツアツでそのへん舞台演技。心中未遂後ローダを抱きしめているが、夫婦仲は大丈夫なのか。
ミス・フェーン....ジョーン・クロイドン
ローダの通う厳粛な学校の校長で、上流階級のインテリ独身女性。ローダの暴力事件をもみ消すが、それがかえってクロード事故死を招き、父兄らを前に複雑な立場に。言動を見るとローダが犯人だと確信している様子。結局、ローダを退校処分に。舞台版にも同役で出演、いい味出してます!
タッカー....ジョージ・クラーク
エモリー....ジョゼ・ホワイト
モニカの知人で犯罪学者もしくはルポライターの男性二人組。タッカーさんがメガネの温厚そうな中年で、エモリーはジャーナリスト然とした容貌。お茶に招かれ、そこでの犯罪談義で連続殺人犯デンカー(クリスティーン実母)の消息について語る。タッカーはクリスティーンから遺伝説について解説を頼まれている。
S・デンカー
女性の連続殺人犯、家族を含め多数の人間を殺めるが、証拠を残さない知能犯。今は行方不明で、噂ではオーストラリアに逃亡したらしい。クリスティーンの実母。作中触れられませんが存命なのかどうか。