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電視劇「北魏馮太后」(2006)

電視劇「北魏馮太后」(2006)_d0095406_1162137.jpg   英題Empress Feng of the Northern Wei Dynasty。香港女優・呉倩蓮、大陸俳優・李光潔や張鉄林が出演。4世紀の東晋十六国から、6世紀の南北朝にかけ華北を治めた北魏王朝。三国時代の魏と区別し「元魏」や「北魏」と呼ばれますが、日本だとなじみが薄い。私も、近世時代劇における「北魏では皇太子の生母は死を賜る(子貴母死)」のフレーズが印象にあるくらいでした。西太后もので、臣下が蘭貴人(西太后)の野心を見抜き、皇帝に進言するときのあのセリフ!馮太后は皇帝生母でないが故に摂政できたのでした。事実上の女帝であり文成文明皇后とも。珍しく原題と邦題が同一で、最初は日本語字幕版を見ていましたが、途中から台湾版に切り替ました。そうしたら自宅プレーヤーで再生できないという非常事態発生。リージョンALL/NTSCなのに。



【あらすじ】東晋十六国時代、馮淑曦は後燕王家の出だが、父の罪に連座し北魏の後宮に。その聡明さをかわれ、13歳の皇太孫・拓跋浚の学友になる。後に浚は文成帝となり淑曦は皇后へ。馮皇后は文成帝をよく助け漢化政策をとるかたわら、仏教弾圧をやめ、仏教受容を推進し雲崗石窟を造営。文成帝の駕崩後は側室・李貴人の産んだ献文帝を擁立、馮太后となり摂政として権力を掌握。後には嫡孫の孝文帝をたて、20年間君臨し、均田制導入を果たす。

※北魏歴代皇帝→太祖道武帝(386-409)、2代太宗明元帝、3代世祖太武帝、4代南安隠王、5代文成帝、6代顕祖献文帝、7代高祖孝文帝、8代世祖宣武帝、9代粛宗孝明帝、(敬哀公主、幼主)、10代敬宗孝庄帝、11代東海王、12代前廃帝・節閔帝、13代後廃帝・安定郡王、14代孝武帝。王室は拓跋(元)氏、全盛期は5-7代あたりで、まさに馮太后の時代。

※すごく大雑把な中国史→夏、殷、周、春秋戦国時代、秦、前漢、新、後漢、三国時代、東晋十六国時代、南北朝時代、隋、唐、五代十国時代、北宋/南宋、元、明、清、民国と新中国。漢族以外で中国統一をなした征服王朝として、遼、金、元、清があるが、唐王室は鮮卑系。



南宋は統一王朝というには無理があるなと漢族/異民族史観に飽きたから、北魏ものが見られてラッキー!馮太后は皇太后/太皇太后だけど嫡母/嫡祖母であって皇帝の生母/実の祖母ではなく、孝文帝とも献文帝とも血縁はありません。献文帝生母と孝文帝生母、二人とも北魏の習いで処刑されたため、史実では献文帝と不和だったらしい。この慣習は、皇帝生母をあらかじめ殺し外戚の専横を防止するため。実際、廃止されたらすぐに外戚がのさばったとか。子貴母死の度に皇帝がショックで使い物にならなくなるので、主題の一つに子貴母死の廃止があったんだなあと後から思いました。明や清初の后妃殉死もなかなかだけど。

皇子を産むと死ぬことになるので、后妃はみな娘を産むよう祈願したそうです。馮太后は死んでも構わないから男児を挙げたいとか(結果は流産)、夫に殉死しようと火葬の炎に飛び込んだり流石です。北魏は胡太后、爾太后など女性が強いようなので、もっとドラマ化されないかな。それに実は孝文帝の母親は馮太后(仮説として義理の息子の献文帝とレビート婚)という噂も。韓国時代劇「千秋太后」でも思ったけど、遊牧民族国家の女性って、眉毛が吊り上ったイメージなんでしょうか。着物の襟が左合わせなのが鮮卑の特徴らしく、人により右前だったり左前だったりします。漢人官僚は右前だし、鮮卑貴族は左前。皇帝も太后も左前、宦官は右前。

大武帝→文成帝(祖父と孫)のあたりは皇位継承でもめますが、ドラマではかなり派手に省略、南安隠王はテロップのみの扱い。それから北魏と言えばの三長制と均田制。三長制は隣組みたいな感じで、均田制は既知の通りです。日本史の授業でただ暗記したけど、由来や導入の苦労話を見たら均田制万歳!という気分になりました^^後の世では崩壊してしまうけど。日本語字幕で「チャン乳母」と出てくる常氏、北魏では皇子の生母は賜死のため、乳母の重要性が普段にもまして高かったらしい。普通の乳母と違い、「保太后」というらしいです。皇子が皇帝になれば、彼女も太后になるという仕組み。そういえば馮太后も嫡子や嫡孫から「伊母」「大伊母」と呼ばれていて、これは鮮卑の言葉の音写なのかな。

【登場人物】
馮淑儀/貴人馮氏/馮皇后/馮太后....呉倩蓮
北魏といえばの大政治家、均田制と三長制を史上はじめて導入、北魏の全盛期を支えた女傑。祖父は後燕の皇帝だったが、国破れ父は北魏の刺史(地方長官)に、おばは太武帝の寵姫になる。政敵のさしがねで両親、兄、おばと共に冤罪を着せられ放浪。宮廷の下働きになるが、ちょうど後宮に復帰したおばの引き立てにより皇太孫・拓跋浚の伴読をして崔浩に師事。拓跋浚の即位後は貴人を経て皇后に冊立され、夫の死後は嫡子・嫡孫を補佐し太后として政治をとる。その手腕は、摂政をやめ皇帝親政を開始すると宣言すると、臣下たちが大慌てで止めに入るほど。おばを敬愛し最後まで遺影を拝んでいた。稗史ではいろいろダークな面もありますが、ドラマではめちゃくちゃいい人に描かれていました。嘘っぽいけど見入ってしまった。文成帝との2ショットは俳優さんの年齢差がありすぎてはじめ萎えましたが、中年以降は無理なく美しく、女帝のカリスマ発揮しまくりです。姪の賜死で強い悲しみを得、違勅は「子貴母死を廃止すること」だった。臨終では愛した李沖の帰還を見ようと外出、その車の中で亡くなる。

柳葉.....朱紫文
馮太后の宮女時代からの友人で、馮氏が貴人になった時には選ばれ侍女となる。以来数十年にわたり側近として仕え、プライベートをすべて把握。皇族からも「柳姑姑」と呼ばれ敬意をもたれている。中年後は普通ですが、若い時代は顔の演技がすごくて、厳粛な式の時に一人背景で笑っていたりする。馮妙蓮の密通を目撃し、馮太后に注進するか悩む場面も。私もこんな親友が欲しいくらい。女優さんがあまり古装がはまっていなくて(すみません)、ブスキャラなのかと思っていたら、現代装では美人でした。似合う似合わないって大事なんですね・・。

常太后.....高宝宝
文成帝の皇子時代からの乳母で、即位後は太后に。本人いわく宮女出身だそうで、ずっと独身なのかな?即位後もあぶなっかしい文成帝をよく諭し、馮淑儀のこともかわいがっている。太武帝時代は彼女と馮左昭儀の女傑鼎談が面白かったです。文成帝に子貴母死の廃止を進言されると、祖法を乱すのかと激怒。保太后(職責)で常太后(名前+尊称)。仕方ないけど、いつの間にかいなくなる。えくぼの素敵な女優さんで、「母儀天下」の霍夫人。

3代世祖太武帝.....張鉄林
北魏の基礎を固めた名君だが、最期は宦官の宗愛に暗殺される。仏教を排斥し、漢人官僚を積極的に登用するも、キレやすくたまに大きい雷を落とす。演じる張鉄林は清朝・乾隆帝俳優という感じですが、はじめ気が付かないくらい北魏ファッションがなじんでいました。右だけのイヤリングが素敵。主演とありましたが最初しか出ない。

崔浩
太武帝に重用された漢人官僚で、鮮卑国家のなかで漢化政策の先鋒にたつ。役職は司徒(大臣)。皇子時代の文成帝と馮太后の家庭教師。優しいおじいさんの体ですが極端な性格で、国史編纂にあたり漢族式にストレートに書いてしまい、鮮卑貴族から強烈な反発をくらって失脚。最後は処刑されてしまう。その後を泣きながら馮淑儀が追いかけるシーンは涙。

馮左昭儀....張咏荷
馮太后のおば。太武帝の最愛の妃。気難しい太武帝の操縦が上手い。まだ若く直情的な馮淑儀に宮廷で生き残る術をたたきこむ、厳しくも慈愛に富んだおばさま。自国が滅亡した経験から権謀数術に長ける。豊満美女で、盛りの多い北魏ファッションが似合う女優さんでした。彼女の死も会話に出るだけで看過されさみしい。

宗愛
宦官で中常侍という高官。政治を壟断し太武帝を暗殺、太子をも巻き込み政変を起こすが、敗れて誅殺される。ロングヘアの気持ち悪いおじいさんで、ドラマ冒頭の一番の悪役。見た目のインパクト大。宦官はわりと右前の襟合わせなのですが、漢人なのか関係ないのか。

5代文成帝/拓跋浚....李光潔
太武帝の嫡孫。皇太孫として早くから認められ、廃太子が謀反を起こしたためイレギュラーの祖父→孫継承により即位。馮太后の夫で、幼少時は崔浩につき儒学を学ぶ。気分屋でちょっとワガママ。同年代のはずが、馮太后に甘える姿は弟という感じ。作中では子貴母死の習慣を知らず、生母は病死と言われ育ったらしく、寵姫・李貴人が賜死するときは大荒れ。祖父の定めた仏教排斥をやめ、雲崗石窟を造営。善政をしくが20代で病死。清初が舞台の「大清風雲」豫親王ドド役で印象に残っていた俳優さんで、もっと弁髪姿が見たい!

李貴人.....洪雁
金持ちの妾であったが没落し宮廷の下女になり、太原公に見いだされその養女とされ、文成帝の貴人にとりたてられる。馮淑儀とも張り合うが、第一皇子を産んだことで賜死。はじめ嫌な女でしたが、死ぬときは意外に殊勝で哀れ。しかし第一皇子=皇太子を産んだら賜死ってわかっていて何であんなに強気?太后になれず権勢もふるえないし、皇后であっても皇太子生母なら賜死らしいので、どちらにせよ息子を産んだ時点でアウトだと思うのですが。

6代顕祖献文帝/拓跋弘
前代・文成帝の息子で、母は李貴人。生母は賜死、馮太后を養母として育つ。幼少期は利発そうだったが、成長後はあの両親の子がこれ?という暗君。后選びも勝手だし李氏を選んだがどう見ても品がなく趣味がよくない。本人も自覚はあるようで、早々に息子に譲位し太上皇帝へ。皇帝として役立たないと踏んだ馮太后が毒殺したという説が濃厚なようですが、ここでは元気に隠居しいつのまにかフェードアウト。絵がうまいみたい。俳優さんも結構お年で、馮太后と同年代に見えて違和感。

乙渾
献文帝即位後、政権を壟断した。自らが皇位に就こうと暗躍するものの、馮太后に先手を取られて処刑される。九族まで死刑に。あまり頭がよくなさそうで、なんで権力を握れたんだろう。馮太后の摂政デビューはこの人の誅殺というイメージがあります。

7代高祖孝文帝/拓跋宏....劉冠翔
前代・献文帝の息子。生母は李貴人(献文帝の母とは別人)。両親に似ない聡明な皇子。5歳で父から譲位され、馮太皇太后の摂政を受ける。国をよく治め、鮮卑貴族の力を削ぎ国民を富ますために均田制導入に燃える。成人後、馮太皇太后の姪二人を妃に迎え、姉とは一子をなし、妹は皇后に。史実では姉妹両方ともそりが合わなかったみたいですが、ここでは姉とラブラブ。子貴母死の廃止を決心し実行に移す。太皇太后の反対を押し切り南征、成功をおさめ洛陽へ遷都。馮太后を看取り、三年喪に服す。馮太后の実子という噂も納得の、仲の良い孫と嫡祖母で、文成帝と常太后の姿にだぶります。古装のはまるイケメン俳優さん。太后死後も漢化を推し進め姓も拓跋から「元」に変え、のちのちほころびが・・。

馮妙媛/馮妙蓮(二役).....李依暁
馮熙の娘で馮太后の姪。媛が姉で蓮が妹、性格は真逆で姉は善人、妹は悪人。聡明な姉は皇子を産み賜死し、深く悲しんだ馮太后と孝文帝に子貴母死を廃止する決心をさせる。妹は縁故で皇后になるものの、高菩薩と密通、馮太后の死後は廃后されるはずが、手前で劇終。周囲みんな妹が出産して姉が皇后になってほしかったのは。実際は姉も子供を産むことはなく、孝文帝と不和で出家。このへんとても脚色されている

馮熙
馮太后の兄。幼少時、戦乱で生き別れるがのちに再会、縁故で高官になる。馮妙媛、妙蓮姉妹の実父。妙媛の賜死では泣いて妹に助命を請う。悪い人ではないが使えないダメ兄。

東陽王 /拓跋丕...樊志起
皇族。穏健派で他の皇族が均田制に反対する中、ひっそりとそれを支持し、農業を学んでみたりする。文成帝に託され、馮太后と献文帝を守るため、乙渾の処刑に参与。「龍票」でのシブイ演技が光るベテラン。洛陽遷都後のさらなる漢化には賛同せず鮮卑の習慣を維持し、変わり者扱いされたとか。いかにもそんな感じの不思議なキャラクター。

拓跋天賜.....張平
皇族。均田制に反対し孝文帝に直言、李沖らを暗殺しようとするが失敗。庶人に落とされるが、のち許され王爺に復帰する。改心した時の反省が派手なわかりやすい悪役。髭がセクシーで鮮卑族らしい。

李沖
東陽王の女婿。馮太后に見いだされ欽差大臣に。馮太后とひそかに愛し合っているが、もちろん表ざたにはできない。均田制導入のため、李豹と共に全国を巡り調査するが、太后の臨終には間に合わず、「李沖来遅了」の絶叫で馮太后は息絶える。しかしイマイチ印象が薄い。

花木蘭
劉宋の武将で漢人。北魏と対立しているはずが、馮太后とツーカーでいろいろ助けてくれる。やたらに出番が多い。乙渾除去や飢饉対策の際に登場。

李豹
李沖とともに均田制導入のため欽差大臣に任命される。線の細い文人。

高充
馮太后と柳葉の恩人。馮太后に先立って亡くなる。馮左昭儀や常太后を知る、4代に仕えた数少ない老臣。
by hungmei | 2013-05-30 08:11 | 2中韓古装電影・電視劇 | Comments(0)
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