張禧嬪(チャンヒビン)といえば2003年KBSのキムヘス主演版がメジャーですが、さかのぼること15年前、キム・ウォニら出演のSBS張禧嬪を鑑賞。キムヘス版が政変に左右された側面を描いたのに対し(張禧嬪=南人派、仁顕王后=東人派に担ぎ上げられた)、この「妖婦~」はベタに悪女モノで悪いのは張禧嬪。キムヘス版でも「スケバン王妃」って感じで(by「R35な女子日記」うめ子さま命名)迫力がすごかったけれど、「妖婦」のヒビンは目つきが悪く私にはとても美人には見えません(すいません)。
キムヘス版は100話、こちらは全63話で、キムヘス版では80話ごろ仁顕王后が復位し残り20話でしたが、これは王后が復位したらもうすぐ張禧嬪も最期、という感じ。
ドラマ紹介頁★★あらすじ★★
李氏朝鮮19代粛宗(スクチョン)の時代、宮廷は王の実母にして前王の正室・明聖王后が勢力を振るっていた。16歳で即位した粛宗は、強い母に気おされ気味。そんな粛宗に目をつけ、懐柔しようと出たのが宮廷の最長老・荘烈王后。荘烈王后は16代仁祖に継妃として嫁ぐも50歳の年齢差から愛されず子どもももなく、息子が王となりもとから気性の激しい明聖王后とは何かと対立し、姑なのにたててもらえないという境遇だった。
それはまた、荘烈王后=南人派、明聖王后=東人派との接近も招き、幼い頃から宮女として出仕していた通訳官の娘・張玉貞(チャン・オクチョン)は、東人派が擁立した第一継妃(=二代目王妃)の仁顕王后に対抗するため、荘烈王后と王族の東平君(王族、粛宗叔父)により粛宗へ接近、みごとお手つきとなる。明聖王后に一度は後宮を終われ、子どももも失うが、玉貞は諦めず復帰の機会を狙う(続)。
★★感想★★
ベタな悪女モノで、かつ95年当時の流行メイクで撮影されているのか女性陣の眉が極細!見ながら違和感がぬぐえません・・・。キムヘス版と違うのは、キムヘス版が自ら東平君(祖母の貴人趙氏は寵愛されていたが、息子を王にしようと画策しそれがバレて賜死)に近づき、適齢期ごろに入宮したのに比べ、こちらのオクチョンは史実に近く幼少時から宮廷にあがっています。
キムヘス版の荘烈王后はさすが子ナシでバックも弱いのに長年宮廷で生き残っただけあり半分妖怪みたいだったのに比べて(すみません)、こちらではキムヘス版で怖い明聖王后を演じたキム・ヨンエさんが荘烈王后を演じています。
約10年前にヨメシュートメ逆の役。でも演技力抜群ですから、キムヘス版よりは大人しめの荘烈を好演。また粛宗は王様俳優のイム・ホ(チャングム中宗など)で当時20代、キムヘス版粛宗がチョン・グアンリョルで常に40代に見えるのと対照的にフレッシュ!物語も顕宗の葬儀に紛れ王族が宮女を妊娠させた「紅袖の変」から始まり、燃え上がる王子と宮女の密通だのオクチョンと粛宗がすぐ結ばれるなど(3話くらい)、ラブストーリー度が高い。
権謀好きな私は目が点に、、、。終盤、復位した金(キム)貴人(粛宗側室、東人派の要人の娘で、一度失脚し追放。キムヘス版では復位後出番ナシ)が張禧嬪に対抗していたのは面白かった。せっかく復位したのなら、また対決してほしいですもんね、て私だけかな。張禧嬪兄ヒジェがおとなしいのもキムヘス版との違い。あのバカ兄貴がおとなしいと変な感じだよ。
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★★結末★★
オクチョンははじめ最低位からスタートするが粛宗初の王子を産み(のちの20代景宗)、寵愛はますます深まる。人格者の仁顕王后はオクチョンにやさしく接するが、明聖王后は対立する南人派が押すオクチョンの失脚をたくらむがならず、禍根を残して死亡。その後、オクチョンの産んだ王子は元子となり(王の長男/嫡長男で、世子の前段階)、オクチョンは側室の最高位である嬪に封じられ、禧嬪張氏に。
そしてついに粛宗の南・東人派闘争対策/王家威信回復政策の一環として一回目の換局(政権交代)、南人派が朝廷の主流に。失脚した東人派官僚らは粛清、仁顕王后は廃妃、張氏は禧嬪から昇格し王妃へ。しかし6年後、東人派の勢力が復活(二度目の換局)、王妃張氏は嬪に格下げ、仁顕王后が復位。しかし仁顕王后はまもなく35歳で死去。王妃復位を狙い仁顕王后を呪っていた事が発覚した禧嬪張氏は賜死。43歳の生涯を閉じた。
★★結末をみての感想★★
気になったのが、まず、キムヘス版と没年が違う(笑)。あっちでは39歳っていってたけど、そういえば資料でも43歳のほうがよく見るし、実年齢と数え年の違いにしても差が開きすぎるし・・。
仁顕王后死後、東人派は老論(ノロン)派と少論(ソロン)派の内部対立が激しくなり、仁顕王后死後に禧嬪張氏を復位させるか新しく揀択(=王妃選び)をするかでもめとりました。しかしここでも第二継妃の元敬王后は出てこない!見たいぞ!イ・ビョンフン監督「トンイ」で淑嬪チェ氏が主人公だそうで、そこでは出演がないか期待です♪キムヘス版ではソン・イルグク演じる粛宗初代王妃の家柄、キムチュンテクが活躍しますが、ここではそれほど・・。
終わり方も、キムヘス版が史実シカトの円満ラストだったのに対して、ここでは世子(=ヒビン実子で世子、のちの景宗)の「オモニ(お母さん)!」の悲痛な叫びで終わっています。これからを考えると・・合掌(史実では景宗は父の粛宗から母のことで疎まれ、精神的に不安定になり、即位後短期間で死亡した。その後はチェ氏所生の王子が21代英祖として即位したため、英祖には異母兄毒殺説がある)。粛宗に対してセッサゴジェで母の助命嘆願はするわ、苦労人だなあ・・。
彼の初代嬪宮沈(シム)氏は青松シム氏出身、4代世宗王妃(昭憲王后)を出していたのは知っていましたが、13代明宗王妃の仁順王后もだしていました。景宗ファミリーはみんな早死にで、沈氏も即位前に死亡、第一継妃も亡くなり、第二継妃が英祖朝までご存命。
アッパレだったのは禧嬪張氏の死に様で、往生際の悪いのはキムヘス版と同じながら、死に顔の壮絶さならこっち。階段からひっくり返り、白目を向いて絶命する張氏!怖いよー。また、キムヘス版では木の棒で禧嬪のクチをこじ開けていましたが、ここでは銀スプーン(普通に食事に使う)でこじ開けていた。
またその賜薬の量も見たことのないほど大量で、ラーメンスープ並。くだらないですが思わず目を見張りました!また粛宗は世子に嘆願されたり禧嬪処刑に葛藤しますが、「漢の武帝はその後の禍根を恐れ昭帝の実母を何の罪もないのに殺した」とのたまってました。燕山君の悲劇はいいんだろうか。
なんにせよ、世子の最後の叫びが「アバママ(母上)」でなく「オモニ(お母さん)!」で顔のアップだったのがむちゃくちゃかわいそう。張氏の遺体はすみやかに宮廷外に運び出し葬られましたが(遺体搬出用かご?も普段使いのかごと大きさあまり変わらない。その中に布団をしいて遺体を寝かせている様子)、その後改葬され、今は粛宗・仁顕王后ど同葬されているそうです。破格の扱いですね。
禧嬪のお墓に行けばおまけで(失礼)粛宗と仁顕王后の墓も見れるのかな。ちなみにキムヘス版OPでも妖婦でも粛宗を中央に右に仁顕王后・左に禧嬪の絵が出るけど、これ改葬されたし王の実母だから?中国でもよく当主・正室・跡継ぎを生んだ側室の並びの絵で供養されてるもんね(でないと側室が供養絵にのることもないだろーし)。
確か向かって右(当人からは左)が上座のはず・・あいまいですが。生前の待遇=禧嬪待遇で葬儀が許されたあたりが燕山君再来忌避対策でしょうか(でも宮廷外で行う条件をつけられていた)。また江戸時代の日本なら名誉有る自害は切腹などですが、あちらでは儒教の父母から授かった身体を損なわないよう、自決は服毒らしい。清朝ドラマだと自決は縊死(首吊り)が多い気がするんだけど・・女性は服毒もしてたか?
余談ですが普通「●嬪×氏」ってかかれるのに、なんで「張禧嬪」なのかなと思ったら、「どの嬪も×●嬪(例:崔淑嬪)と書くが侮蔑的なニュアンス。●嬪×氏の表記が正しく、
張禧嬪だけは三大悪女で侮蔑的な呼び方が定着した」らしいです。88年ビョンフン監督の「仁顕王后」でのチョン・インファさん禧嬪も見てみたいなあ。
KBS2003年キムヘス版紹介・その1はこちらキムヘス版紹介・その2